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 もっと大規模な「ネガティブ事件」を分析した研究もあります。2011年に蘭アムステルダム大学のアラン・ミューラー達がSMJ誌に発表した論文では、2005年に 大型台風「カトリーナ」が米南部を襲った直後の企業株価を分析しました。ミュラー達は米442企業を対象として、先述したKLDデータから企業の社会活動の「無責任さ」についての指数を計算しました。これは、CSR指数の逆数のようなものです。

 そして分析の結果、カトリーナが米南部を襲ったとき、各社の株価が軒並み下がる中で、「無責任さ指数」が高い企業ほど、その下がり幅が特に大きくなったのです。逆に言えば、「それなりにCSR指数が高かった企業は、株価の落ち込みを抑えられた」ということになります。

 これらの結果は、「日頃からCSR活動をきちんとしていれば、企業イメージや透明性が向上し、いざネガティブな事件に巻き込まれても、投資家が極度の不信を起こさずに済む」ということを示しています。まさに、いざというときの「保険効果」です。

CSRは、結果として稼げる

 CSR研究は発展途上の分野ですので、本稿で紹介した話が絶対に正しいとまでは断言できません。しかしこのような研究成果を見る限り、「CSRのポジティブ効果を過小評価してはならない」ということは、間違いなく言えそうです。

 重要なのは、本稿で紹介した「イメージ効果」「情報開示効果」「保険効果」のいずれも、「外部のステークホルダーに、自分たちのCSR活動をきちんと説明すること」が前提になっていることです。だからこそ、プラス効果が得られるわけです。そう考えるとCSRとは、企業と外部ステークホルダーとの「コミュニケーションの場」の1つと捉えるのが良いのかもしれません。

 もちろん、多くの企業がCSRのような社会貢献を目指す場合、その出発点は「善意」であり、あるいは「他社がやっているから」なのかもしれません。しかし善意の結果としてのCSRで「稼げる」のであれば、それは悪いことではないのではないでしょうか。