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 そこでセルバエス達はさらに統計分析をし、その結果として、広告費を多く使うタイプのいわゆるBtoC系の企業で「CSR→業績」のプラス効果を確認したのです。逆に広告費をあまり使わないBtoB企業では、「CSR指数が高いほど、業績はむしろマイナス」という結果になりました。

 実際のところ、企業もこのことは意識しているのかもしれません。例えば、日経リサーチが調査・発表している、CSRを含めたあらゆるステークホルダーにとっての「優れた企業」を評価する総合企業ランキング「NICES」(2013年)の上位10社のリストを見ると、1位のセブン&アイ・ホールディングスを筆頭に、ほとんどがBtoC系になっています。やはり消費者イメージを意識する企業の方が、CSRには熱心なようです。その意味では、5位にランクインしている東レはBtoBに近いですから、大健闘と言えるでしょう。

CSRの情報開示効果

 さらに近年は、CSRの副次的な効能も注目されています。

 例えば、米ハーバード大学のベイティン・チェン達が今年発表した研究では、世界49カ国の2000以上の企業データを使い、「CSR指数が高い企業の方が、資金制約を緩和できる」という結果を得ています。資金制約が緩いということは「キャッシュが自由に使える」ということです。CSRは企業の財務状況の改善に寄与するのです。

 チェン達はこの理由を、CSR活動の「情報開示効果」に求めます。例えば、企業がCSR報告書を作れば、それは従来のIR活動を超えて、会社の内部情報を公開することになります。それが結果として企業の透明性をさらに高め、投資家の信頼を増し、資金調達をしやすくするというのです。

CSRの保険効果

 さらに最近注目されているのが、CSRの『保険効果』です。

 2009年にブリガム・ヤング大学のポール・ゴドフレイ達が発表した論文がその代表です。ゴドフレイ達は、1992年から2003年の間に、米上場企業が「消費者から訴えられたり、政府から何らかの制裁を課せられたりする」などの、「ネガティブな事件」に巻き込まれた事例254件を抽出しました。そして、事件に巻き込まれた企業のCSR指数と、事件発生後の各社の株価変動を統計分析したところ、CSR指数の高い企業の方が、ネガティブ事件による株価の落ち込みが「軽度で済む」という結果になったのです。