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 そして、過去の全般的な研究結果の傾向を「メタ・アナリシス」という手法でまとめたのが、米アイオワ大学のフランク・シュミット達が2003年に「オーガニゼーション・スタディーズ」に発表した論文です。この論文でシュミットは、過去に発表された52本の実証研究の結果をまとめてメタ・アナリシスをし、全般的な傾向として「CSR→業績」には、やはりプラスの関係があることを確認しています。

なぜCSRは儲かるのか

 なぜ「CSRは業績にプラス」になり得るのでしょう。経営学では、主に2つの説明がされています。

 第1に、「CSR活動は、周囲のステークホルダーからの評価を高め、それが好業績に繋がる」という説明です。例えばCSRが顧客に評価されれば、顧客はその企業製品を積極的に買うかもしれません。より優れた人材を獲得しやすい可能性もあります。行政のサポートも得やすくなるかもしれません。

 第2に、「CSRは自社の人材強化に繋がる」という主張もあります。CSR活動を通じて多様なステークホルダーと交流できるので、従業員や管理職の知見が広がるという意見です。また、「CSR活動をすると社会全体のことを考えるようになるので、経営者・管理職が将来を見通す力を養える」という主張もあります。こういうことが、長い目で見た企業競争力の強化に繋がるというわけです。

CSRで儲かりやすい業界はどこか

 しかし、話はそう簡単ではありません。先のシュミット達の研究は2003年に発表されましたが、その後10年の間に、CSR研究は日進月歩でデータの充実が進み、分析手法もさらに精緻化しています。そして最近の研究からは、「CSRと企業業績の関係は、これまで考えられていたよりも複雑」な可能性が示されているのです。

 例えば、ロンドン・ビジネス・スクールのヘンリ・セルバエス達が2013年に「マネジメント・サイエンス」に発表した論文では、1991年から2000年までの米S&P500社の1万を超える観測値を使ったデータ分析を行っています。

 やや専門的になりますが、この研究では「固定効果モデル(fixed effects model)」という統計手法を使って、「明示的にデータには表れないが、企業それぞれが持っている固有の影響」を制御しました。すると、それまでプラスだった「CSR→業績」の効果が消えてしまったのです。すなわち「全般的な傾向として、CSRが業績に貢献するとは言えない」という結果になったのです。

 ここで、セルバエス達はさらに一歩進んで、「それでも『ある特定の条件下』では、CSRのプラス効果は残るのではないか」と考えました。中でも、CSRが「消費者イメージ」を向上させる可能性に注目しました。CSR活動をすれば、それを知った消費者からの印象が良くなることは十分にあり得るでしょう。