それに合ったどんな傘(折りたたみ傘、ビニール傘、大きな傘、晴雨兼用傘など)を使えばいいのか戸惑い、時には間違った傘を選んで濡れてしまうこともある。

 にわか雨だと把握できれば、コンビニでビニール傘を買ってしのぐか、喫茶店で雨宿りをするかというチョイスができる。ゲリラ豪雨だと把握できれば、濡れないようにしっかりと傘をさし、災害に備えることだってできるのだ。

 人生の雨も、同じだ。

 どんな雨(=困難)なのかさえ把握できれば、有効な傘を選択し、雨から身を守ることが可能になる。

 質のいい親子関係や職場の上司・部下関係は、ストレスに対処する力を育む、強い影響力を持っている。だからこそ、上司・部下関係を大切にしてほしい、と思うわけだ。

 ただ、勘違いしないでほしいのは、質のいい上司・部下関係は、「上司が好き、部下が好き」ということではない。「どんなに好きな上司」でも、「人間的には好きなんだけど、一緒に仕事はしたくない」と思えるような関係は、把握可能感を高める質のいい環境とはいいがたい。

 「いい仕事をさせてもらった」「いい経験が一緒にできた」といった具合に、「仕事」という共通のルールの存在なくして、質のいい関係はありえない。仕事を通じて相手を尊重し、仕事を通じて相手に感謝できる関係性こそが、ストレスに対処する力を育む質のいい関係なのである。

 そこで、だ。
 まず、くだらない、次元の低い「言った、言わない」論議を避けるために、会議の内容は書面に残したり、不明な部分は互いに確認し合うなどすべきた。把握可能感に悪影響を及ぼしそうな悪の芽は、事前に摘み取っておく方がいいだろう。

 次に、上司にやってほしいことがある。
 「俺が責任を取るから、ドンとやってこい」と、部下を安心させてほしいのだ。

 今時、そんな“男気”のある上司、いないでしょ?
 そうかもしれない。

 「ドンと行って来い」なんて言う頼もしい上司は、絶滅危惧種に指定されてしまったのではないかと思うくらい、お目にかからなくなった。年功序列が廃止され、終身雇用が崩壊したご時世で、そんなことを言うには、相当の覚悟と勇気がいる。

 だが、「俺がすべて責任を取る」と部下を安心させる上司に、心が動かない人はいない。そういう上司だからこそ、「責任を負わせるような失敗はしないようにしよう」と思い、「上司のためにも120%頑張ろう」とモチベーションが高まるのだ。

 こういう上司の下で働く部下は、踏ん張って頑張って仕事をするから、結果的には上司が喜ぶことになる。さらに、「俺が責任を取るから」と責任の所在を明かにし、ブレることのない上司を演じれば、部下のメンタルヘルスは確実に高まるはずだ(少なくとも、健康社会学的には)。

 でも、“役職”や“世間体”にしがみついている人は、口が避けても「俺が責任を取ってやる」なんて、言えないだろうね。それでもやっぱり、世の中の1人でも多くの人に、元気で働いてほしいと思う私としては、「俺が、すべて責任を取るから。心配せずにやってこい!」と、上司であるアナタに、ぜひとも言っていただきたい、と願っています。

 そして、当然ながらそんなかっこいいセリフを吐いたなら、「え? 俺、責任取るなんて言ってないよ。俺は知らないよ」なんて、死んでも言わないように。

 どうぞ、宜しくお願いいたします。

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