※この記事は日経ビジネスオンラインに、2015年5月7日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

 ビジネスは常に失敗と隣り合わせである。何かを変革しようとすれば、必ず反対勢力が存在するから、推進者は軋轢と過度の緊張から決して逃れられない。

 自分もまさにそんな厳しい環境下で必死にあがき続けてきた。そんなときに、日系でも外資でも、上司に恵まれ、ずいぶん助けられたものだ。起業してからも、人との出会いを通じて多くを学んでいる。

 かつてはそれを、運がいい、ありがたい…で片付けてきた。しかし、「人財」育成に従事するようになってからは、有効な出会いが偶然なのか、それとも必然的な結果なのかを考えるようになった。過去仕えた上司を思い浮かべると、最近よりは、遠い昔のほうがより鮮明に思い出されるから不思議だ。それだけ影響が大きかったということだろう。

 入社したときの上司からはその後の人生を左右する教訓を得た。

 1年目の振り返りレポートを書かされたときのことは、いまだによく覚えている。「○○ができなかった。××もできなかった。2年目は頑張りたい」というようなことを、10枚ほどのレポート用紙に一所懸命びっちり書いて提出した。そうしたら、ほんの数行だけ目を通した後に、「ダメ、すべて書き直して」と返された。ワープロもない時代ゆえ、「最後まで読まんのかい!」とひそかに憤慨する気持ちもあった。

 まぁ筆者は感情が顔に出やすいタイプなので、不満は残らずしっかり伝わったと思う。私にとっては禅問答のように感じられるやりとりが続き、一体何度文章を書き直させられたことか? 都合の悪いことは記憶がない。ただ最後に頭に刻まれたのは、「できないことが問題なのではない。できないことが分かっていながら、できるまで努力しないことが真の問題なのだ。ならば、努力する箍(たが)を、いかに自分に、はめるのか?」という教訓だ。

「パワハラ」だからこそ育った部分があった

 今ならすぐ「パワハラ」とか言われそうなやりとりの結果出来上がったレポートは、部門の経営層・管理職が臨席の発表会で大爆笑となった。それは、「自分は仕事を離れた場での人付き合いが悪い。その理由の1つは酒が弱く、宴席が苦手だからだ。積極性を増すためには、毎日ビールを1杯飲んで酒に強くなれるよう練習する!」といったような内容であったと記憶している。

 正直、レポートの書き直し指示があまりに何度も繰り返されたことに対する反発心(と小さなウケ狙い)があったのは否定できない。ただ、「もう一段掘り下げて原因を探り、変革の箍を自分にはめる」ことの大事さは体に刻み込まれた。

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