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本来持っている能力を発揮させる

 ビジネスの場面において、デレゲーションとよく似た文脈で使われる言葉に「エンパワーメント(empowerment)」があります。

 エンパワーメントは文字通りに訳せば、「パワーを持たせること」。この言葉は、もともとは、抑圧されたり不利な立場にあったりする集団(例えばマイノリティー)が結束して状況を変化させていこうとする意味で使われました。

 人間が本来持っている能力を発揮できる社会を実現しようという意図を込めて使われるようになったこの言葉は、やがてマネジメントの世界でも使われるようになりました。

 「任せること」自体に力点を置いたデレゲーションとは異なり、エンパワーメントはそのことによって個人が組織の中で主体的に活躍できるようにパワーを与えるという意味で使われます。

 エンパワーメントは、人材が自らの主人公となり、自ら立ち、自らを律する「ちから(つまりパワー)」をつけるようにしてあげることです。エンパワーメントには、単なる権限委譲以上に「自らのちから」をつけるように支援していくというニュアンスを強く持っているのです。

エンパワーメントの基本3点セット

 「社会」レベルでのエンパワーメントと「会社」レベルでのエンパワーメントはやや方向が違うのですが、「より活躍できるように」「本来の良さを引き出して」「それを支援するための条件を整備する」という「基本3点セット」は同じだと私は思います。

 デレゲーションでさえそうでしたから、エンパワーメントはさらに「言うは易し、行うは難し」です。

 なぜならば、原理的には組織をコントロールするためには、下手にパワーを与えると、個々人が「勝手な」(本人の自覚では「自律的な」)動きをしてしまうという事態も生じかねないからです。だからといって、単なるアサインメントやデレゲーションでは、本当の意味の責任感も育たず、リーダーの育成もできません。

 デレゲーションでもエンパワーメントでも、およそ「他者に任せる」ためには、その対象となる人の能力(デキ)と意欲(ヤルキ)を見極め、それ以上にその人の目的と会社のベクトルが合っていることを慎重に確認することがポイントになると思います。