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※この記事は日経ビジネスオンラインに、2013年10月16日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

 部下が「ついていけない!」と感じてしまう上司の典型として、指示があいまいで、責任を取らない人がいます。

 「任せたから」と言われたので仕事を進めたら、「どうして相談しないで勝手にやるのか」と言ったり、逆に相談に行ったら「なんでいちいち相談に来るんだ、自分の責任でやれよ」と自分は責任を放棄したり。

 そういう上司には、「デレゲーション(delegation)」という言葉の意味を教えてあげるとよいと思います。

送って任せる「分身の術」

 デレゲーションは「権限委譲」ですが、「代表派遣」や「代表団」といった意味もあります。「向こうへ」を表す接頭辞の“de-”と「任じて送ること」を意味する語根の“leg-”が組み合わさって、もともと「遠い場所に派遣する代表」を指しました。通信手段のなかった時代は、いったん送ってしまうと権限を与えざるを得なかったのでしょう。

 そのような背景から、デレゲーションには「あとは一切任せた」というニュアンスがあります。経営用語として使われる場合は「仕事を委任し、権限を委譲すること」です。私は「送って任せる『分身の術』」と私訳しています。

 1人でできる仕事は高が知れています。1日に使える時間は睡眠を一切しなくても24時間しかありません。上に立つ者がその仕事とそれに伴う権限をうまく委譲し、それを受けた人がさらに下に委譲する。その輪がつながり広がっていくと、組織は個人では到底出せない力を発揮します。

 ですから、いかに人をうまく使うかが、生産性を決定づけます。規模の拡大を追求するのであれば、デレゲーションは欠かせないのです。それが「組織」で仕事をすることの本質だともいえます。

デレゲーションを妨げる4つの理由

 しかしながら、デレゲーションは口で言うほど容易ではありません。権限委譲ができない理由として次のような本音を聞きます。

 その1:「私が、この仕事を自分でやりたい」
 その2:「部下なんかより、自分の方がうまくできる」
 その3:「細かい点まで、自分のやり方で通したい」
 その4:「自分がやらなかったら、きっとうまくいかない」

 こんなふうに思っているのでは、未来永劫デレゲートはできないでしょう。その1の大きな欠陥は、自分がマネジャーであることを忘れていることです。その2の背後に隠れているのは、自分を部下と比較して無意識に競ってしまっていることです。その3の問題点は、自分のスタイルを貫き通したいと思ってしまっていることです。その4の弱点は、自分の能力に対する過大評価があることです。