「モンスターを倒さなくていい、ただ歩き回っていてください」
●人事部長:「ロールプレーイングゲームをやっているのに、モンスターを倒さなくていい、ただ歩き回っていてください、と言われたらどうですか。ストレスかかりますよ」
○社長:「確かに、それは気持ち悪いだろう」
●人事部長:「ここへ来て、若手で調子を崩したものが2人ほど出てきました。彼ら彼女らはとてもやる気があり、真面目です。ところが、あれこれ上司に訴えても『頑張るな』『無理するな』と取り合ってもらえないので、精神的に参ってしまったようです」
○社長:「何ということだ……」
●人事部長:「一所懸命やろうとしても適当にあしらわれたり、不必要だと思われる仕事を振られて本来の仕事の邪魔をされるので、だんだん無力感を覚えたのだと分析されています」
○社長:「誰かに分析してもらったのか」
●人事部長:「はい。心療内科の先生に相談しました。『学習性無力感』と呼ぶそうです。自分が無力だと学んでしまった状態のようです。パワハラかどうかはインパクトと回数で判断されます。一回一回はさほど強烈ではなくても、執拗に繰り返されるとハラスメントと認定されます」
○社長:「学習できるほど執拗に繰り返されたわけか。今年に入って時短が進み、現場はうまくいっていると思い込んでいた」
●人事部長:「調べたところ、残業したいという若手に対し、『社長命令だから駄目だ』と言って帰宅させていたようです。お言葉ですが社長が管理者の評価ポイントに時間外労働の削減を加えたことが影響しています。売り上げとか利益という結果はそう簡単に出せませんが、残業削減なら簡単です。無理やり帰宅させてしまえばいいわけですから」
○社長:「……」
●人事部長:「心療内科の先生がおっしゃっていましたが、こういう以前とは違うパワハラが横行しているそうです。これが新型パワハラです」
○社長:「なんともややこしいな。やる気のない管理者がやる気のある部下にそんなハラスメントをしているだなんて」
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