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※この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年6月24日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

 本連載は、昨年(2013年)まで米ビジネススクールで助教授をしていた筆者が、世界の経営学の知見を紹介していきます。

 さて、最近は「同族経営」に今まで以上に注目が集まっている印象があります。例えば先月には、3年前に経営破綻したバイオ業界の有名同族企業「林原」の林原建元社長が、『林原家 同族経営への警鐘(日経BP社)』というタイトルの本を出版して話題になりました。

 ほかにも、少し前なら大王製紙事件のように、日本では企業トラブルの背景として、その同族性が指摘されることが多くあります。しかし他方で、星野リゾートの星野佳路社長が「ファミリービジネスは宝の山である」と主張しているように、最近はその意義を再評価する動きがあるのも事実です。

 実は、世界の経営学とファイナンス分野の研究では、統計分析を使った実証研究の成果から、星野社長と同じような主張がされています。すなわち、同族企業は業績が悪くないどころか、実はむしろ非同族企業よりも「業績が高く」、しかも「社会に貢献する」可能性も主張されているのです。

 今回は、世界の同族経営の研究成果について紹介しながら、日本への示唆を探っていきましょう。

同族企業は、日本だけに多いのではない

 まずみなさんに知っていただきたいのは、「同族企業というのは、日本だけで多い企業形態ではない」ということです。同族経営が経済活動に占める比率が高いのは、多くの国で共通することなのです。

 例えば、米ハーバード大学のラファエル・ラポルタらが1999年に「ジャーナル・オブ・ファイナンス(JOF)」に発表した論文では、世界27カ国の企業規模上位20社についてデータ分析を行い、「創業者一族が株式の20%以上を保有している企業」の比率は、27カ国平均で約30%にもなることを明らかにしています。アルゼンチンではこの比率は65%ですし、ベルギーでも50%、メキシコではなんと100%になっています。

 同様に、米アメリカン大学のロナルド・アンダーソンらが2003年にJOF誌に発表した論文でも、米S&P500にリストされる企業のうち、3分の1が同族企業であることが示されています。

 日本はどうでしょうか。日本の同族企業について最も包括的なデータ分析をされている1人は、京都産業大学の沈政郁(シム・ジョンウッ)准教授です。沈准教授らが2013年に「ジャーナル・オブ・フィナンシャル・エコノミクス」に発表した論文では、2000年時点で日本の上場企業1367社のうち、約三割が同族企業であることが示されています。