※この記事は日経ビジネスオンラインに、2010年8月20日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

 2010年8月7日号の米『タイム』誌が表紙に掲載した衝撃的な写真が世界的な話題を呼んだ。タリバンに鼻を削がれた18歳のアフガン女性のあまりに悲惨で痛々しい顔がアップで掲載されたからである。

 「アフガン女性とタリバンの復権」と題された記事の内容は、この若いアフガン女性の身に起きた悲劇を、背筋が寒くなるほど詳細に描いている。

 この女性アイシャは12歳のときに、アフガニスタン南部のウルズガン県にあるタリバン戦闘員の家庭に売られ、そのタリバン兵と結婚させられた。アイシャの伯父にあたる人物が、そのタリバン戦闘員の親族を争いの末に殺してしまった代償として、部族の習慣に従って妹共々このタリバン家庭に売られたのだという。

 夫であるタリバン戦闘員は身を隠して生活することが多かったため、アイシャと妹は、嫁ぎ先の家族から家畜同様、奴隷のような扱いを受けて過ごした。17歳になったアイシャはある晩、あまりの虐待に耐えきれなくなって嫁ぎ先の家から逃げ出したが、タリバン戦闘員である夫は一年かけてカンダハルに逃げていたアイシャの居場所を見つけ、ウルズガンまで連れ戻し、彼の住む村の近くの山中に連れて行った。

 「嫁ぎ先の家族から奴隷のように扱われ、殴られ、逃げ出さなければ殺される。逃げる以外選択の余地はなかったのだ」

 とアイシャは訴えたが、裁判官は聞く耳を持たなかった。裁判官といっても、地域のタリバンの司令官である。彼はこの訴えにまったく動ずることなく、

「村の他の女性が同じことをしないようにアイシャを見せしめにする必要がある」

との「判決」を下した。

 タリバン司令官のこの判決に基づいて「刑」を実施したのは、何とアイシャの嫁ぎ先の家族の男たちだったという。実際、アイシャの義理の兄が彼女をねじ伏せ、彼女の夫であるタリバン戦闘員が自らナイフを取り出したという。最初に夫がアイシャの両耳を削ぎ落し、続いて彼はアイシャの鼻に取り掛かった。アイシャはすでに痛みで気を失っていたが、すぐにまた意識を回復したという。自らの血で息を詰まらせたからである。

 男たちはそのまま彼女を山中に置き去りにして去って行った、と『タイム』誌の記者アライン・ベーカーは書いている。

 この事件が起きたのはタリバンが政権を握っていた10年前の話ではない。昨年の出来事である。彼女は米軍に発見されて一命を取り留め、今はカブール市内の秘密のシェルターに匿われている。

続きを読む 2/3 着々とタリバンとの妥協を進めるカルザイ政権

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