「我が社にはビジョンがない」「売り上げ減は営業部のせい」「メンバーに危機意識がない」…。疲弊した職場から聞こえる不満の数々。組織を率いるリーダーの大切な役割の1つは、こうした職場にうずまく組織の問題を解消し、閉塞感を打破することにある。
ところが、リーダーが問題を解消しようとすればするほど、問題はこじれていく。良かれと打った施策が仇となり、思い切って組織体制や人事評価制度を変えても、一向に雰囲気が良くならない。
実は、こうした問題の根本原因は、リーダー自身の行動に起因している場合が少なくない。なぜあなたの職場の閉塞感は払拭されないのか。問題の構造と仕組みを、組織改革のコンサルティングなどを手がけるオーセンティックワークスの中土井僚氏に聞いた。
(聞き手は蛯谷 敏)
疲弊した職場や組織のコンサルティングを数多くご覧になってきました。
中土井:リーダーシップ研究で有名なハーバード大学大学院のロナルド・ハイフェッツという教授がいるのですが、彼が『リーダーシップとは何か!』という著書の中で、「課題」というものについて、興味深い考え方を紹介しているんですね。

広島県呉市出身。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、インタービジョンなどを経て2008年にオーセンティックワークスを設立し、代表取締役に就任。一部上場企業を中心に経営者30名以上のコーチング実績、組織開発コンサルティング・ファシリテーター実績を持つ。近著に『人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門』がある。(写真:的野弘路、以下同)
ハイフェッツ教授曰く、世の中に存在する課題には2つのタイプがあると言います。
1つは、「技術的な課題」と呼ばれるものです。少し抽象的な概念で説明すると「問題が自分自身の外側にある」タイプの課題なのですが、これは例えば、水道の水漏れや自動車の修理などを思い浮かべていただけると分かりやすいと思います。
すべて、対応すべき課題を調査し、分析すれば原因を割り出すことができます。例えば、水道の水漏れも自動車の修理も、詳細に調べれば原因は把握できますよね?その対策も訓練さえすれば基本的に誰でも習得できるという特徴を持っています。企業経営に当てはめれば、「コストを一律3%カットする」「工場の生産性を10%上げる」といった課題がこのタイプに当てはまるでしょうか。
取り組むべき課題とその対処方法を明確にしやすい課題ということですね。
中土井:もう1つの課題は若干厄介です。ハイフェッツ教授は「適応を要する課題」と呼んでいますが、こちらは取るべき対策を明確にしづらいという特徴を持っています。
どういうことか。例えば、不登校になり、引きこもりになってしまった子供を抱え悩んでいる親を想像してみて下さい。この場合、親が望んでいる結果は「子供が元気に学校に通う」状態であり、非常に明確です。ところが実際には、あの手この手を尽くしてもそれが実現できるとは限らない。
Powered by リゾーム?