家族みんなが集まり自宅で食事する時は、まずソフレを敷きます。その上に、ナン、新鮮な野菜、ヨーグルト、飲み物、漬物、スプーンとフォーク、人数分のお皿を並べます。そして、お米を大きな皿に盛り、ソフレの真ん中に置きます。おかずは家族それぞれのお皿に取り分け、ソフレに置きます。

お皿を手に持ってはダメ
食事をする時、いくつか注意することがあります。お皿を手に持って食べたり、麺類をすすったりするのは失礼な行為です。あと、口に物を入れたまま話をしてはいけません。食事を始める前と終わった後には、普段は神様に感謝をします。とても非健康的だと言われながらも、食事が終わったとたん紅茶が出ます。角砂糖や夏目と一緒に飲む熱い紅茶で、落ち着いた気分になります。砂糖は紅茶に入れるのではなく、直接、口に含みます。
自宅で食事を何時に摂るかは別に決まっていません。各家庭の事情によってさまざまです。朝食は5~7時に、昼食は12~15時に、夕食は19~22時に食べる家庭が多いでしょう。例えば、夜に誰かの家に集まる時は、皆が20時以降に揃い、22時くらいから夕食を食べます。
イラン料理の調理には長い時間がかかりますが、食べるのは速いです。調理に6時間以上もかかるアブグシュトを30分以内で食べるなんてもったいないと思います。しかし、料理が冷めてしまう前にすべてを食べ終わるのがイランの文化です。
イランでは、外食はまだ日本ほど普及していません。200年前までは、男性だけしか食堂で食事することができませんでした。恐らく、こうした状況が、外食が広まらなかった原因になっていると思われます。現在でもまだ、男性専用の食堂が少し残っています。
それらを整理すると次のようになります。
- レストラン:西洋の概念に基づくもの。家族の皆が入れる。女性だけで入ってもかまいません。メニューにはケバブやいくつかのおかずがあります。
- ソフレ・ハネ:イランの伝統的な雰囲気を持つ食堂。音楽を演奏することもあります。ここでは、ケバブはもちろんディゼィのような伝統料理も提供します。さらに、食事のあと水タバコを楽しむことができます。
- チャイ・ハネ/ガフヴェ・ハネ:もともと男性向けの食堂。食事後に水タバコを吸うために男性たちが集まります。昔は政治問題や社会問題について雑談をする場所でした。
- タッバキー:羊の頭を使った料理だけを提供する店です。外国人はその臭みを好みませんが、イラン人にとっては立派な朝食です。若干油っぽいですが、それを食べると1日中元気でいられます。
- チェロ・キャバビ:ケバブ専用の店。普段はテイクアウトだけが可能です。
現在、日本でもイラン料理が簡単に食べられます。東京だけでも15カ所以上のイラン料理店があります。その多くはケバブや他のおかずを提供しています。ただし、ディゼィを出す店はなかなかありません。日本のガス代は高く、ディゼィを長時間煮るのにもったいないからです。
東京のイラン料理店の多くは、食事後の水タバコもメニューに載せています。さらに、ベリーダンサーが公演をすることもあります。ベリーダンスはイランのダンスではありませんが、一応中東の文化なので、イラン料理店でそれを眺めても違和感はありません。
(この記事は日経ビジネスオンラインに、2013年11月21日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)
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