入院患者はもっといたわってあげましょうよ。ただ、糖尿の方への差し入れは、ちょっと悩むところですね。

小田嶋:お見舞いに来てくれるという人が「差し入れはどうしたらいいですか?」って、メールをくれるんだけど、「だったらTシャツか何かをお願いします」と言っていたんだよね。Tシャツって、入院ウェアとして唯一のおしゃれポイントなのよ。そうしたら、Tシャツをもう、山ほどいただきました。

やや不謹慎ですが、被災地状態になっているんですね。

小田嶋:1日3回着替えても入院中、1回りするぐらいいただきました。

今日、着ていらっしゃるシャツも派手で気分が上がりますね。

小田嶋:でしょう。まあ、自分の怪我も大丈夫とは言いがたいけれど、それでも整形外科は全然明るいのよ。

:そうだよね。

小田嶋:以前に右足を折った時も、入った病院がここと同じように、横に看護学校があって、看護学校の生徒さんたちなんかがよく遊びに来ていました。病院というところは、何か冗談を言われた時に、面白くて「あははっ」て笑うと不謹慎じゃない? その点、整形外科っていうのは、遊びに来るのに適しているんだよね。

:内臓以外はね。結構、笑いが絶えない。

小田嶋:患者はおっさんから若いやつまでいろいろなんだけど、若いやつが多いんだよ。

:だいたい骨を折るって、若いやつなんだよ。

小田嶋:そうそう。スポーツマンだったり、おっちょこちょいだったりする人たちですよ。

:入院した時が最悪で、それからはよくなる一方という科は、大変だけど、気分が楽だよね。

「入院が転機で、会社を辞めたんです」「は?」

小田嶋:それで、病院に入院するというのは、いろいろなことの転機の1つになるんですよ。普段、仕事で会社を行ったり来たりしていたり、通学していたりというルーティンの中で考えていることと、そのルーティンから切り離された場所で考えることって違うわけで、たいていのやつって、その違う場所で考えてしまうわけ。そもそも俺も入院したから、就職した会社を辞めたようなものだったから。

新卒で就職した会社を8か月で退社した事件は、そういうことだったんですか?

小田嶋:そうなの。入院するとさ、「俺の人生って何だろう」みたいなところにいくじゃない? それで、うーんとなって、「ジョン・レノンも死んでしまったし、人生は一度だけだし」と考えるのね。

それで、「俺も辞めようか」みたいになるわけ?

:あの年は、王貞治がバットを置いて、山口百恵がマイクを置いて、ジョン・レノンが死んだ年だった。

小田嶋:そう、1980年。そんな時に、俺がサラリーマンをやっていていいのかな、と、 何かね、そういうふうに思うんです。

普通は思わないんじゃない?

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