小田嶋:外食とかお菓子とかはやめてね、と言われるから、痩せますよね。まあ、この食事でいれば、太るということは不可能なわけだけど。
確かに小田嶋さん、顔の色つやがよくなって、元気そうに見えます。意欲とか滑舌とかも、全然衰えてないじゃないですか。
岡:滑舌が衰えたらやばいでしょう(笑)。
小田嶋:幸い、頭を打ってないしね。
岡:3週間で3.5キロ痩せるなら、12週間なら12キロか。
小田嶋:いや、そんなにうまく行くわけはないんだけど、ただ5キロ減るだけで、ひざへの負担って全然違ってくるから。
岡:確かに「ひざが痛い」と言っている人って、ほとんどが太っているんだよ。
小田嶋:「治療するより減量する方が早いよ」、って先生に言われました。
でも、退屈でしょう?
小田嶋:それが退屈でもないんだよ。
そんなもんなんですか。
岡:だってさ、小田嶋の場合、入院した時と、普通の日常とあんまり変わらないじゃない? 別に、いつもどこかに出掛けている人じゃないわけだから。
小田嶋:基本、引きこもりですから。
そうか。(納得)
小田嶋氏にとって英語はポエムである
小田嶋:とはいえ、ああ、心が傷ついているんだな、と思うこともあったのよ。12週間の入院が必要です、と言われた時は、目の前が真っ暗になりましたしね。
だいたい俺は自転車に乗っている時も、電車の中にいる時も、常にウォークマンをつけて音楽を聴いている人なの。でも、入院して4日間は音楽をまったく聴く気にならなかった。若いころに覚えがあるんだけど、精神がちょっとネガティブな時とかに変に音楽を聴くと、気持ちの堤防が決壊することがある。そうやって心がぐずぐずになるじゃないか、ということを自分ながらに恐れていたんじゃないかと。
『ノルウェイの森』(村上春樹、1987年)の冒頭ですね。
小田嶋:ああ、そうね。たとえば「ホテルカリフォルニア」を聴くとすると、その曲自体が表している何かではなく、「ホテルカリフォルニア」を聴いていた時の場とか、人とかの記憶が紐づいてよみがえってくる。これは心に余裕がないと耐えられない。だから怪我と入院という事態で、結構いっぱいいっぱいだったという感じはありましたね。
岡:表面的には「入院ハイ」みたいな状態になるんだけど、内心はそうじゃなかったはずだよね。
小田嶋:何かまずいことが起こった時に、「ここで落ち込んでいたら、俺はだめになる」と、危機に瀕して躁状態になる、という自己防衛はあるよね。岡なんかの大学時代のあれの時だって、やっぱりちょっとハイだった。
岡:ああ、そうね、思えばね。おやじは失踪しちゃったし、家は破産だし。抱え込んだら死んじゃうよ、あれ。だから「おいおい聞いてくれよ」みたいに、一種、ネタにして笑っていくしかない。
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