本記事は2015年11月5日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

(日経ビジネス電子版編集部)

(前回から読む

前回に続いて、小田嶋さん入院編です。前回は入院に至った壮絶な怪我話をうかがいました。

小田嶋:今回、この入院でよかったことが、糖尿病の発覚ということでした。

小田嶋さん、糖尿病だったんですか。

:今回の怪我がなければ、小田嶋は糖尿病が進んで、帰ってこられないところまでいっていた可能性があったわけです。

小田嶋:健康診断というものは、人間ドックも区の健診も、20年ほど全部すっ飛ばしていましたからね。

:だから、よかったわけだよ。

小田嶋:よくはない。ただ、怪我の治療に関しては、世間で思っているほど痛くはなかった。30年ほど前に、俺は右足の方を折ったことがあるんだよ。折った瞬間はもちろん痛かったけど、翌日、翌々日が「死ぬかも」というぐらい痛かった。その記憶があったから、今回も病院に運ばれた後、「これから3日後ぐらいに、もっとすごく痛いのが来る」と思って暗くなっていたのね。でも、その30年の間に医学の進歩があって、状況が全然変わっていた。

医学の進歩、恐るべし

:今は怪我の箇所を冷やすでしょう。

小田嶋:そう。冷却液が循環している冷却パッドを、怪我のところにずっと当てておく。摂氏6度の設定で、凍傷にはならないけど、最大限冷やしている、という状態で、極力腫れないようにしている。痛みの原因というのは、腫れなんだよね。腫れると内圧がかかるから、めっちゃ痛くなる。それを今回はなるべく腫れないようにして、腫れが引いたら手術というプランだった。ところが手術に向けて血糖値、血圧を測ったら、「この値は何ですか!?」ということになり、糖尿病がめでたく発覚した。

 糖尿の場合、手術で切った傷からばい菌が入ってしまうと、とても治りにくくなるんだって。この血糖値を下げないといけない、というのでインスリンをどんどん投与して下げて、手術の予定が3回延びた後に、ようやく手術をしたのが2週間後でした。

:糖尿病は失明しますからね。

小田嶋:幸い、帰ってこられない臨界点には達していなかった。

ここにいるみなさんは大丈夫ですか。

:僕は大丈夫です。

小田嶋:岡は検査マニアで、小まめに検査しているもんね。

:この間、人間ドックで肺活量を調べたんですが、そうしたら4000だと言われた。58歳平均って3100なんだって。だから4000って、かなり高い。ということは、たばこって体にいいのかなって、今ちょっと見直しているところなんだけど(笑)。

小田嶋:そんなことはないです。でも俺は、3週間で3.5キロ痩せているからね。

:お前はね、10キロぐらい落としても平気だよ。

小田嶋:とにかく糖尿病の食事というのがなかなかのもんだから。肉なんて、ほら、冷しゃぶみたいな、脂っ気とかそういうものが一切抜けた、ぱさぱさな感じ。あと、煮魚というものは、これは味付けはしているんでしょうか、みたいな。

:塩とか、かけちゃいけないんでしょう。

当然です。

小田嶋:でも、不思議なもんで、慣れるんだよね。今回の入院のハイライトというのは、私がニンジンとついに和解したことですね。

:だってニンジンが、もうメインディッシュなわけでしょう。和解しないとね。俺は耐えられないけどね、そんなことになったら。

(※注:退院後、この和平関係がどうなったかは、単行本『超・反知性主義入門』の261ページをお読み下さい)

 右の『超・反知性…』の元となった当サイト連載の「ア・ピース・オブ・警句」の筆者、小田嶋隆さん。当サイトでのもうひとつの連載が、2007年からはじまった日経ビジネスオンライン屈指の大河連載、この「人生の諸問題」です。
 ちなみに、小田嶋さんは既に無事退院済みで、先日は取材対応に赤羽の駅前まで自転車で出てこられました。担当としてはとっても心配でした…。さて、おかげさまでNHKや全国紙、スポーツ紙、夕刊紙などなどからインタビューが目白押し、書評でも大好評、増刷決定!の『超・反知性主義入門』。今回の記事の中でこれから触れる、入院期間のちょっと弱気な小田嶋さんのコラムも入っております。高校時代の同級生、森本あんり・国際基督教大学副学長との2万字に及ぶ「日本人と宗教、そして反知性主義」をテーマとした対談も読み処。それでは引き続き、清野由美さんのナビゲートで「人生の諸問題」を、のんびりまったりお楽しみ下さい。(Y)

続きを読む 2/5 小田嶋氏にとって英語はポエムである

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