地下鉄の駅上のフレンチレストランで、ランチをいただきつつお話をしております。
小田嶋:第4学区の中では、やっぱり豊島グループと板橋および北グループと、文京区は分けなきゃならない。それが今日、改めて分かった。
岡:いや、豊島区はどこにいても心の中に目白がある(笑)。豊島グループの僕としては、北と一緒のジャンルにされるのは嫌なのよ。
小田嶋:お前はここまで来て、名誉文京区民と言い張るのか。
岡:いやいや、だってさ、板橋なんて「板の橋」ですからね、もともと。そりゃあ板橋宿なんていって、江戸時代には日本橋から数えて最初の宿場町でしたよ。
由緒正しいところではある。
岡:それでも板の橋だよ。明治になって、電車は通せないよね、それじゃ。
相変わらず失礼ですね。板橋、および北グループとして、小田嶋さんにも言い分があるんじゃないですか?
北区のブロンクス感
小田嶋:板橋と北も、仲がよくないの。でもそれは漫才の定番ネタで、栃木と群馬のディスり合いみたいなことなわけ。北区と板橋区は互いに同じように外れなんだけど、外れ方の性質がちょっと違う。北区というのは、外れではあるんだけど、交通の便はよくて鉄道は発達している。で、板橋って電車も通ってねえだろ、っていう方向になるわけ。
岡:まあ、結局、仲がいいってことですよ。
小田嶋:もちろん我々(=板橋区民と北区民のこと)は、お互いに分かって言ってるんですよ。だけど、じゃあ、交通が発達しているのはいいことなのか、というと、要するにそれは荒れているということでしょう、と。
岡:交通の便はいいのに、土地が安いのはなぜなんだ? と。
小田嶋:だから、北区民が抱いている都会感というのは、便利だということと、多少荒れているということで都会なんだ、と(笑)。
NYにおけるブロンクス感ですね。
小田嶋:そうそう、ブロンクス感。
岡:行ったこと、あるのかよ。
小田嶋:ない。ただ、駅前にやくざもいないような町に住めるかよ、みたいな気分は、ある種のニューヨーカーと通じるものなのね。
だから駅前に「自由の女神」もいるんですね。
岡:サウナだけどね。
小田嶋:板橋区はその点で、もう少しのんびりしている。赤羽が便利な一方で、板橋は便利じゃないけど、環境はいいわけ。緑豊かで、美術館があり、大仏がある。
大仏……? って、いきなり違和感のある言葉なんですが。
岡:あるよね、東京大仏。知らないの?
知らない。知らないのが普通だと思う。
板橋区の3点セット
小田嶋:だから、大仏のない区に住めるのか、というぐらいの感じで、板橋区というのは文化的には北区より絶対に文化度数が高いのよ。
岡:あと、板橋には植物園もあるんですよ。
小田嶋:大仏、植物園、美術館。この3点セットがある。
岡:結構いいものが揃っている。
何で岡さんは、そんなに板橋区に詳しいのですか。
岡:いや、だって豊島区の隣だから。むしろ仲間だもんね(笑)。
名誉文京区民がそうおっしゃっています。北区には名誉文京区に相当するような場所というのは、あるんですか。
小田嶋:ない。北区は何もない。
岡:いや、渋沢栄一邸はあるんじゃないか?
小田嶋:あ、そうそう、飛鳥山ね。飛鳥山というのは、江戸時代の別荘地みたいなもので、大名の下屋敷があったあたりで、関東大震災で東京が被災した後は、岩崎弥太郎とか、あの辺の財閥の連中が別荘を作った。あと、田端文士村ってのも、北区にはありました。どちらも文京区と北区の区境のあたりで、あそこらへんが北区の唯一の財産だね。
岡:要するに飛鳥山(北区)と目白(豊島区)が、名誉文京区域なわけだよ。
小田嶋:実はね、北区には大学が少ない。大学がもっと欲しい、というのも北区民の悲願なんですね。かつては東京外国語大学があり、「大きくなったら外語大に行くんだよ」というのは、子供のころの俺はよく言われていたんだよ。
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