自分で手帖なり、スケジュール表なりは付けないんですか?

小田嶋:書いてはいる。書いてはいます。

:確かに小田嶋は、麻雀だけは忘れないんだよ。

記憶力は基本的に抜群ですものね。

小田嶋:……。

編集Y:あのう……ついでに私も言わせていただいていいですか。最近、原稿の締め切りも厳格になっているんですよ。当たり前のことなのですが。それで、締め切りを過ぎても原稿が届かない場合は、編集者の管理責任を問う、ということになって、私は掲載前日の木曜日になるたびに、とても胃が痛む思いをしております。

小田嶋:すみません……。

編集Y:いえ、ところがですね、小田嶋さんが木曜の夜に麻雀をやるとなると、その前に原稿がちゃんと入るんです。ですから、むしろ木曜に麻雀を入れてほしい、というお話でして。

:そう来たか。だったら、木曜日に何が何でも麻雀を入れないとね。

編集Y:それも、できれば午前中に。

:おいおい、それはいくら何でも、僕にしたって……。

赤羽を離れないのはなぜなのか

オダジマ先生、よろしいですか。

小田嶋:はい。分かりました。

では、気を取り直して、赤羽編を始めしょう。

:赤羽……お前もなかなか出ていかないね、この街を。

小田嶋:おそらく家賃が高くなくて、車がなくても生活できる場所で、電車ですべての場所に移動できて、と言う意味でとても住みやすい場所なのよ、ここは。

:しかも赤羽は、ちょっとしたブームになっているというじゃないか。

漫画家の清野(せいの)とおるさんが描いた『東京都北区赤羽』のシリーズが大変人気になって。

:清野さんの弟?

はい。(もちろん冗談ですからね)

※『東京都北区赤羽』:漫画家、清野(せいの)とおるによる、赤羽を題材にしたエッセイ漫画。続編『ウヒョ!東京都北区赤羽』とともに、赤羽に集う珍妙な人々を活写する。2015年には、本作にもとづいたテレビ番組「山田隆之の東京都北区赤羽」が制作され、テレビ東京で放映。トレンディドラマの対極にある、ゆるマイナー・ドキュメンタリードラマという新ジャンルを開拓した。

小田嶋:清野(せいの)さんとは「新潮45」で赤羽対談をしたんだよ。

今回もゲストとしてお願いを差し上げたのですが、漫画がお忙しいことと、「小田嶋さんとはもう対談をしたからいいです」ということで、かないませんでした。では、そろそろ赤羽の散策と行きましょう。小田嶋さんは今日、どこに連れて行ってくださるのでしょうか。

小田嶋:駅前からスタートするならば、「まるます家」「いこい」あたりから入って、「OK横丁」とかを通って、私の母校の赤羽小学校とかに行きましょうか。

:僕、ちょっとお腹が空いている気もするんだよね。

小田嶋:だったら朝っぱらから全開営業の「まるます家」で決まりですね。そこで腹ごしらえをしましょう。

※「まるます家」:昭和25(1950)年創業の居酒屋。朝9時から開店し、漫画『孤独のグルメ』(谷口ジロー、久住昌彦)に取り上げられたことで、酒飲みにとって“聖地化”が進んだ。

飲み屋街の中に、ぽつんと小学校が

「まるます家」に到着しましたが、なんと、休店日です。

:残念だね。

その代わり、店の脇に救急車が横づけされて、ご高齢のおじさんたちが取り囲んでおられます。

小田嶋:何が起こったのか……。

:たぶん他の店で昼酒を飲み過ぎたんじゃないか。

小田嶋:その可能性は高い。何しろこの辺りは都内屈指の昼酒寛容区域だから。

:どんなエリアなんだ。

そんなエリアのど真ん中に小学校が見えます……。

小田嶋:東京都北区立赤羽小学校です。俺の出身校で、創立140周年にならんとしている。俺は昔、学級委員で、学旗の上げ下ろしをやっていた。このあたりの伝統校なのよ。

:といっても、すぐ隣は飲み屋街。すごい立地だよね。こんな伝統校、文京区にはないだろう。

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