「日経ビジネス電子版」の人気連載コラムニスト、小田嶋隆さんと、高校時代の級友、故・岡康道さん、そして清野由美さんの掛け合いによる連載「人生の諸問題」。「もう一度読みたい」とのリクエストにお応えしまして、第1回から掲載いたします。初出は以下のお知らせにございます。(以下は2021年の、最初の再掲載時のお知らせです。岡さんへの追悼記事も、ぜひお読みください)
本記事は2015年10月8日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
(日経ビジネス電子版編集部)

日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、ぜひ。
大好評に付き増刷決定!の『超・反知性主義入門』の筆者、小田嶋隆さんのもうひとつの顔、というか、油断しきった素顔をさらしているのが、2007年からはじまった日経ビジネスオンライン屈指の大河連載、この「人生の諸問題」です。
大人になりきれない少年オジサンな、小田嶋さんと岡康道さん(高校時代の同級生にしてクリエイティブディレクター、タグボート社長)、2人の、しょうもなくも、含蓄がありまくりな話をエンエンと続けて、ついに今回、小田嶋隆の故郷、赤羽に流れ着きました。
東京の最北エリア、その名も北区。荒川の対岸は埼玉県。しかし、一度ハマると深ーい街。銀座、原宿、六本木が、お子さまの遊び場に見えてくる東京のディープスポットを、赤羽生え抜きの隆くんが案内します。(ナビゲーター:清野由美)
某月某日午前。一同、JR赤羽駅に集合。しかし、案内役の小田嶋隆が一向に姿を現さない。アウエーの地で、なすすべもなくたたずむ一行。寒い。らちが明かず、小田嶋の携帯を鳴らす。
もしもし、あ、小田嶋さんですか?
小田嶋:ふにゃらららら。
今、どちらですか。みなさん、もう赤羽駅に集合しているんですけど。
小田嶋:(一瞬、「はっ」とした気配)
もしかして、まだご自宅とか?
小田嶋:あ、や、す、すみません、う、今日、でしたっけ、か。
先週お電話で確認して、昨日もメールしておきましたよね。
小田嶋:あれ、そうでしたか、いや、そうでした、ね。
駅、寒いんですけど。
小田嶋:わ、すぐ出ます、すぐ。ご、5分、いや、じゅ、15分で行きます。出たとこにデニーズがあるから、そ、そこで待っててください。
ということで、小田嶋さんは約束を忘れていました。
一同:えーっ!!(ブーイング)
寒い風が吹く中、みんなでぞろぞろとデニーズに移動しました。窓から煙った街にたたずむ「自由の女神像」が見えます。ここ、ニューヨークでしたか?
サウナ、パチンコ、自由の女神
小田嶋:いやいや、すみません、すみません。お待たせしました。あれはニューヨークではなく、赤羽名物、東口駅前雑居ビルですよ。
わ、早っ!
岡:お前、起きてそのまま来たのかよ。
小田嶋:あそこはサウナがあったり、パチンコ屋があったり、飲食店があったりという娯楽の殿堂になっている。ほら、浪人時代の土曜の夜って、徹夜で麻雀やって、日曜は早朝から草野球して、それであそこのサウナに入って、焼き肉を食うというフルコースがあったじゃない? そのフルコースが集約されているところなのよ。
ちょっと待って。勉強は?
小田嶋:勉強は週末が来る前に、誰にも知られないように猛烈にやっている。本当は週末も勉強したい、ぐらいは思っているんだけど、遊びの誘いを断るとバカにされて、カッコがつかないじゃない? だから週末は歯を食いしばって遊び続ける。そういう場所なんだよ。
それにしてもオダジマ先生。今日の待ち合わせは、そもそも小田嶋さんのご指定で、その上でメール、電話、メールの3段階で確認しておきました。それで忘れるとなると、編集者と私と岡さんはどうしたらよいのでしょうか。
小田嶋:う。
岡:この間、小田嶋と麻雀をした時も、仕事の打ち合わせを入れていて、あたふたと出ていったよね。僕たちはもう50歳を過ぎている。というか、還暦が目の前なんだよ。もういい加減いい大人が、麻雀があるという日に、そういう打ち合わせを入れるかな? と、僕もとても驚いたことを言っておく。
小田嶋:う。
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