小田嶋:本当かどうか分からないんだけど、よく山に登るやつらが言っていた話で、「王子の野戦病院から流れてくる寝袋」というのがあって、それがとても高機能なんだけど、機能にそぐわないほど安く流れてくるんだよ、ということで。

それって……。

小田嶋:要するに……。

:当然、防水ですね。

小田嶋:防水のいいやつですよ。だけど以前の使用者が、ベトナムでお亡くなりになった米兵だったりする。

きゃー。

:あの時の俺なら、それでも買ったかもしれないね。高機能ならいいじゃないか。だって俺が生きていかなきゃいけないんだからさ。

小田嶋:お前は、その地点から電通に就職という大ジャンプがあったからね。

:そうそう。そこから電通ですから、すごいギャップですよね。しかも第二天神荘には28歳ぐらいまでいましたからね。その後いろいろあって、38歳ぐらいで部長か何かになった時は、椎名町のホワイトハウスというところにいました。

小田嶋:椎名町のホワイトハウス……って、もしかして豪邸か。

そこで、なぜ小竹向原

:白いモルタルのアパートです。僕にしたって、名のある会社の部長がこれでいいのか、と、ネーミングも含めて、いろいろ考えちゃうわけだ。それで、いくら何でも、もう部長なんだから鉄筋に住もうと。

小田嶋:すごろくの「進め」のコマだね。

:で、もちろん、どこに住んでもよかったわけですよ。もう部長なんだし。

青山でも西麻布でも代官山でも、もうどこでも選び放題で。

:だけど、なぜか、僕が選んだ土地は、小竹向原だったんだよ(笑)。

小田嶋:何で、その半径2キロ以内というのになるかね。

:そうなんだよ。僕、あそこから出られなかったの。

小田嶋:まさしく、「豊島区、岡康道すごろく」だね。俺の別の友達も小竹向原に住んでいたんだけど、豊島区内で10回以上、引っ越しをしていた。初めの5回ぐらいまでは全部リヤカーだった、というぐらい近いところで。「引っ越したんだよ」と言うから、どこだと聞くと、「角を2つ曲がったところ」とかで、お前は葛飾北斎か、と。豊島区って、そういうやつが多いよね。

小田嶋さんの引っ越し歴というのは、どんなものですか。

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