岡:そうね。それを自分で分かっていたところが、我ながらいやらしいよね。でもさ、嫌いだったじゃん、感想文なんて。だって、本を読んで咀嚼しているんだったら、そもそも感想なんかないのよ。
小田嶋:俺が文章何とか講座の講師をする時に必ず言う話なんだけどさ、読書感想文というのは、確実に日本人の文章嫌いの元になっているよね。
岡:絶対なっているよ。
小田嶋:ほかの国は、ライティングみたいなところって、要約から入るんだよ、『罪と罰』の要約を400字で書きなさい、とかいうのが本来なら最初のトレーニング課題なんだよ。
岡:ということは感想文とは真逆だよね。
小田嶋:そこで感想を書いちゃうと、お前の感じ方は間違っているとかいう道徳教育にスライドしちゃうでしょう。好き嫌いになっちゃって、それで先生に受けそうな感想を書くことを編み出すようになるじゃない。
この軽業を、日本のよい子たちに伝えたい
岡少年のように。
小田嶋:そうじゃないと、文章を書くことそのものが非常に憂鬱な課題になってくるわけでしょう。まあ、そこで「呼び掛け体」を編み出すってところが、岡の素晴らしいところなんだけど。
岡:今も全国の小学生に伝授したいと思っている。
日本の国語教育の根本を崩しちゃうような発明を。
岡:だから、悪いと言えば悪いよね(笑)。
小田嶋:自分で思考した結果の文章じゃなくて、一種、軽業でしょう。脚本というのか、ある一つの創作でしょう。
岡:企画ではあるけどね。

小田嶋:まさしくコピーライティングでしょう。俺もね、小学校4年生の時かに、原点があるの。当時、生活ノートみたいなのがあって、先生が読んで花丸を付けたり、コメントをくれたりする企画があったんだよね。最初は全員、強制的に2週間やらされて、その2週間が終わったら、「書いてきたい人だけ書いて」になっていたんだけど、俺は書くことが面白くて、丸1年、ずっと書き続けたんだよね。その先生が5年生の時に替わっちゃって、それで非常に手持ちぶさたになって、誰にも出さないけど書くようになった。
こちらも、現在のコラムニスト人生にそのままつながるじゃないですか。
小田嶋:それは今思えば、書くことよりも、コメントが欲しかったんだけど(笑)。
まさしく原点がここに。
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