小田嶋:「サルトルはこう言っている」と、誰かが引用して、それを孫引きしたりしていると、サルトルとは遠からぬ知り合いぐらいにはなっている。それでまあ俺は、1度は本家にお参りしておかないとな、とは思ったんだよ。

自販機を見たら、必ず下に手を突っ込んで、硬貨が落ちていないか確認する。正しい小学生の作法として、みなさんもやっていましたよね。

:僕の読書体験は小学生の時におじさんが押入れにしまっていた『アラビアンナイト』に遡るんだけど、その後、5年生の時に健康診断でレントゲンを撮らされて、どっちかの肺に影があると言われて、運動禁止という学期があったんですよ。その時、教室の後ろに「たけのこ文庫」という学級文庫が設置されていて、「誰が一番最初にこの50冊を読むかな?」みたいなことがあったんだよね。僕は休み時間も外に出られないから、ものすごい速さでそれを読破したの。そうしたら、褒めらてね。それまで、あまり文化的に褒められることのないタイプだったから、先生もさらに褒めてくれて、それから本をいっぱい読むようになったの。

知的欲求ではなく、「褒められたい」が動機。分かりやすいですね。

:ついでにそのころ、読書感想文をどうやって書けばすごく褒められるか、ということも会得した。その話、したっけ?

出ました、おなじみの岡さんマジック

いつもの手口だとは思いますが、それはまだうかがってないような。

小田嶋:俺は聞いたことがあるけど。あのね、要するに、こういうことだろう……。

:いやいや、俺が言うよ。あのね、要するに、話し掛けるんだよ。「僕もそう思うよ、駿太」とかいうふうに(笑)。

出ました。

:そうすると、ものすごい点数になるぞ、みたいなことが分かって、次に感想文の区大会に出しますという時に、よし、よし、よしと、その手法で出して、俺が代表に行く、みたいな。

小田嶋:風の又三郎に話し掛けちゃう。

:そうそう。

なるほど、としか言いようがありません。

小田嶋:「又三郎、君はどこにいるんだい」というやつは、それは反則だよね。

:おかげで、5年、6年はすごく国語ができる子みたいになって。

まさしく広告的手法ですね。

小田嶋:それ、お前、宣伝会議の講師の時とかに話していないか。

:言っておくけど、これは誰にも習ったわけじゃないから。一番最初は無心に、ただそう書いただけだったんだよ。そうしたら急に追い風が吹くようになって、「あれ、この手って、使えね?」となって。

小田嶋:小学校の先生は引っ掛かるよね。うわ、なんて柔らかい感性なんだろうと。それを恥ずかしげもなくできたのが、すごいと思うよ。

:基本的に出来があまりよくない子だっただけに、先生も、「おっ」というところが出てくるわけです。

小田嶋:そこの落差もあるわけで、いやらしい子供ですよね、

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