小田嶋:思い出したよ。昔、岡に紹介された家庭教師の口がこのあたりにあって、俺もこの辺りは通っていたのよ。
赤羽からわざわざ?
小田嶋:それがなかなか条件がよくて、英語ぐらいを教えて、結構な時給を払ってくれていたんだよ。
岡:僕が小田嶋に紹介した、ということは、僕はもっといい条件で家庭教師をしていましたよね。
小田嶋:それでね、この土地の記憶は俺の読書体験に結びついている。俺はこのころ、ずいぶん本を読んだ。
千早図書館ですか。
小田嶋:ううん、千早図書館は実は行ったことがないの。ついでに言うと、大学の図書館も4年間のうちで使ったことは一度もなかった。
何、それ? そんなことって可能なんですか。
小田嶋:でもね、何でだか知らないけれど、千早図書館のそばにある岡のところに、ずいぶん蔵書があったから。
岡:不思議だね(笑)。
小田嶋:お前が借りたり、返したりしながらサイクルしていた話なのか、それともお前のとこの蔵書になっちゃったのか、それは知らないけど。
岡:そこは僕もあいまいではある(笑)。大学時代は親父の倒産で、本は買えないわけですからね。
小田嶋:でも、その前から岡は結構、図書館を利用していたよね。
岡:僕は中学ぐらいからのヘビーユーザーですよ。
本当の読書家って?
小田嶋:それ以上に、敦(=岡さんの弟。NBOでの連載は「生きるための古典」※連載は公開終了、「もう一度読みたい」で一部がお読みいただけます)も、相当なヘビーユーザーだったでしょう。まあ、敦はまっとうなヘビーユーザーだったけどね。
岡:僕だってまっとうなユーザーだったさ。ただ、敦の方がたぶん量は読んでいるし、ちゃんと本も返している。
小田嶋:本当の読書家って、蔵書家のことじゃなくて、敦のような図書館ユーザーなことだと思うんだよね。だって本って、家にそんな置いておけないでしょう。置いておくようなやつって、そんなに……
岡:読んでないんよね、確かに(笑)。だって、本を買うのが好き、というやつだからね。僕も、どっちかというとそうかもしれない。

小田嶋:本当の死に物狂いの読書家って、図書館に行くとオーラを感じるもの。あ、こいつは読んでいそうだなって(笑)。
岡:敦は今も、ものすごく頻繁に図書館に、通っています。
小田嶋:敦は、コピー機が普及していない時代、図書館の本を手書きで写していた人ですからね。
岡:敦はやばいです。
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