内田:自分が持っているモノの「出力」による格付けはやめましょうということだと思います。例えばバイクは、排気量とトップスピードだけど、そういうものから距離をおいている。

 90年代から2000年代の初めくらいから急激に、そういったレーティングに対して興味を示さなくなってきている。それは別に嘆くべきことではないんですが、いまいちどんな方向に向かっているのかわからない。

小田嶋:「草食系」の男の子に対しては、女の人は「なぜ私を口説かないのか」って憤っている方がいらっしゃいます。でも、口説くというのは能動的な行為に見えて、実は口説かれるほうが選択権を持っているんです。口説くほうが「私を選んでください」というオファーを出して、口説かれるほうはいくつかあるうちのオファーの中から一番いいものを選ぶ。そういう構図に最近の男の子たちは気が付いたんじゃないですかね。賢いから。

内田:最近の男の子たちは、口説かないらしいです。「口説く」という語彙がないんですよ。最近は、「コクる」といいます。コクるといっても、「君が好きだ」と言うのではなくて、「付き合っている人、いる?」って質問するんです。音楽はなにを聴いているの? とか、食べ物はなにが好きなの? といった質問と同じように、「付き合っている人、いる?」という質問をぽっと投げる。

小田嶋:ほぅ。

内田:それで、「います」って言われたら、「あ、そう。今日は天気いいね」と自然に話題を変えていくんですが、「いません」と言われたら、「え、そうなの」と、急に話がエロティックになっていく。

コラムニスト 小田嶋隆氏

小田嶋:でも、女性にしてみれば、自分に男がいようが、夫がいようが、私に魅力があるなら口説いたらどうだ、っていうのが本音の人もいるんですよ。しかも、「口説いたらどうだ(断るけど)」って、括弧書きで「(断るけど)」っていうのが付いているのが腹が立つんです。私のことを口説きなさいって周りの男に言うくせに、断る。

内田:なにかあったんですか(笑)。

小田嶋:いえ、大学のサークルで、そういう人がいて。要するに、口説かれたという実績をたくさん作りたい、自分の周りを死屍累々にしたいという願望を持っているというか。だから、男が草食化して口説かれなくなったと言っている女性を見ると、ざまあみろという気になるんです。

内田:そんなに恨みがあるの?

小田嶋:いえ、ちょっと…。

10年ぶりに箱根の山を越えたひきこもりコラムニスト

小田嶋:内田先生の本は、『有事対応コミュニケーション力』といって、震災のチャリティーシンポジウムをまとめたものですね。

内田:はい。神戸大学都市安全研究センターで医療分野のパンデミックの専門家である岩田健太郎先生から、リスクコミュニケーションについてのシンポジウムをやるので出てくださいとお願いされました。ほかに登壇されたのは、同じ神戸大学で企業の危機管理を専門としている藏本一也先生、臨床哲学の専門家である鷲田清一先生、そして原発事故などを第一線で取材しているジャーナリストの上杉隆さんです。

小田嶋:かなり多種多様な分野の方が震災や原発事故について語られていますね。

内田:そうですね。特に上杉さんについては、僕にはジャーナリストの知り合いがいないせいもあって、とても手触りの違う方だと感じました。言葉が明晰で、力強いですね。現場を見て取材している人に特有なのかもしれません。