本記事は2012年7月3日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

(日経ビジネス電子版編集部)

(前回から読む

いつだって僕たちは途上にいる』(岡康道×小田嶋隆)

 岡康道さん、小田嶋隆さん、そして清野由美さんのこの企画「人生の諸問題」は、この9月で連載開始から5年になります。連載に加筆した書籍が新たに発売されました。「人生の諸問題・シーズン3」をもとにした単行本の第3弾『いつだって僕たちは途上にいる』(講談社)が刊行されました。ちなみに単行本のシリーズ名は「人生2割がちょうどいい」。この本はそのPart3となります。

 いつものことですが単行本販促企画としまして、「シーズン4」をお送りしております。プロモです。しかしこうして編集側の清野さんと私がゆったり構えていると、意外に鋭い言葉を繰り出してくるのがこのお二人の油断がならないところ。ぜひ、単行本と合わせて、お楽しみくださいませ。(担当Y)

:ツイッターを初めとするネットメディアが言論空間を少しゆがめている、という話を前回の最後で小田嶋が話していたけど、それは広告にも、もちろん影響を与えているんですよ。

 昔は広告の反響って、電車で女子高生が話題にしている場面を見て、「よしっ」なんて思うような、のどかな牧歌的なものだったんです。それが今どきだと、新しいコマーシャルを発表したら、それに対する不満の声みたいなものが即ツイッター上に飛び交うでしょう。

小田嶋:クリエーターをすごく憶病にしちゃうよね。

:そうなんだよ。ただ、これも前回で小田嶋が言ったように、ツイッター上でどんなに叩かれても、実は「いいな」と思っている人たちは、リアクションというリアクションはしないよね、ということも少しは分かってきた。

絶賛される企画は、凡庸な記事に敗れ去る

コラムニスト 小田嶋隆氏
(写真:大槻純一)

小田嶋:それは昔、俺がマニアックなパソコン雑誌に関わっている時に実感したことがあって。そういうところでは、一太郎特集みたいな凡庸な企画は悪評さくさくなわけ。「オタクの雑誌が、今さらそんなメジャーなパソコンソフトなんか特集してどうするんだ」、とか、ばかじゃないか、とかいう声が編集部にがさがさ来て、編集部は「やっぱりな」と反省していたんだよ。

 で、ある時、「パソコン貧乏」と題した特集を組んだのね。それは「パソコンを持って俺たちはどれだけ貧乏になったか」という話だったんだけど、そうしたらマニアにガン受けして、ものすごい勢いで絶賛のはがきが舞い込んだ。それで、「よし、しばらくはこの方向だ」ということになったんだけど、3カ月後に雑誌売り上げの分析が出てきたら、全然売れてなかった。で、何が売れていたかといえば、マニアから酷評されていた一太郎特集が、結局、一番売れていたの。

:それって雑誌だけに限らず、広告のコミュニケーションとか、すべてに言えますよ。本当は、ダイレクトに届く声をどう読み解くかという部分に、プロフェッショナルの意味はあるわけでさ。

小田嶋:反応がないことと、本当の反応とはつながっていないよね。

:例えば僕たちが制作したCFが放映されると、「またおふざけか」みたいな意見が来るわけよ。最初はクライアントも、「どんな反応でも、反応があるということが届いたことですよね」と余裕を持っているんだけど、それがだんだんたまってくると、「いくら何でもこれは…」になってくる。すると、やっぱりクライアントとして傷を負うんだよ。

続きを読む 2/8 新橋のおっちょこちょいなお父さんは「世論」か

この記事はシリーズ「もう一度読みたい」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。