学生当時にユーミンは聴かなかったんですか。

小田嶋:そう。女の子はみーんな好きだった。けど、俺は聴かなかったですね。

:聴かなかったというより、聴けなかったですよね。だって貧乏すぎて聴けないよ、ユーミンなんて。こっちは親が破産して失踪しているんだから。

確かにユーミンとは最も遠いところにあるシチュエーションですね。

:何が「中央フリーウェイ」だ、ふざけるな、と。

小田嶋:ただ、荒井由実は、好きとか嫌いとかを越えて、必須教養科目だった。だってやっぱり女の子がみんな好きだったから。ユーミンは俺らより2歳上ぐらいだっけ?  

:うん。

小田嶋:ユーミンは、とにかくサウンドがえらくカッコよかったの、当時。細野晴臣がベース、林立夫がドラム、鈴木茂がギター、バックコーラスに山下達郎やら大貫妙子やら、吉田美奈子やらが来た日にゃあ、日本のポップス界のオールスター、そうそうたるメンバーが付いていたという。

:たまり場が飯倉のキャンティですからね。豊島区及び北区の人間には全く関係ないわけだよ。

ユーミンは1人電通みたいな人だった

小田嶋:というか、ユーミンについては、苗場をあんなにしちゃった女、という感じで敵意を感じるんです、私は。

小田嶋隆の黒い青春。

小田嶋:「SURF&SNOW」というばかなアルバムがあったでしょう。それで、俺らのクリスマスを台無しにしたでしょう。俺ら、何、サンタクロースをやらないといけないんですか? というふうになったのは、あの人のせいだよ。

「恋人がサンタクロース」のことを言いたいんですね。

:バブル期のビジネスモデルを、バブルの来る前に、ユーミンが1人で作っちゃったっというのはある。

小田嶋:1人電通みたいな人だったでしょう。

:確かにね。本当にそのぐらいの力がありましたよね。

小田嶋:当時はユーミンが何かを言うと、どいつもこいつもサーフィンは行くわ、スキーは行くわで、世の中がばんと動く感じがあったでしょう。それで、えらい目に遭いましたよ。え、シティーホテル、取らないとだめなんですか? みたいな。

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