そのリアリティを小田嶋さんは評価するんですね。

:まあね、嫌で別れるわけだからね。

小田嶋:そう、嫌で別れる。だから「君は僕の大切な時間を台無しにしたよね」みたいなことも書いてある。

そんなのお互いさまじゃない。

小田嶋:いや、お互いさまなんだけど、別れるってそういうことじゃないですか。君との美しい思い出を大切に僕は生きていくのさ、みたいな別れの歌というのは、ウソつけって。

:大ウソだよね、多くは。

小田嶋:それで、別れた女をディスらせたらボブ・ディランが業界一ですが、付き合っている女をディスらせると、今度はポール・サイモンがなかなか見事なんですね。

それが小田嶋さんの青春と何の関わりが?

現在進行形の方はポール・サイモンだと。

小田嶋:はい、ポール・サイモンが受け持っているんです。ここで私が挙げた「コダクローム」は、追憶の歌なんですけどね。ともかく日本のラブソングって、付き合っている同士の不愉快ないざこざだとか、別れた女に対して「お前みたいなくだらない女は見たことがない」みたいな言い方って、あんまりない。

:ないよね。

小田嶋:これはぜひあるべきだって(笑)。

それで、それが小田嶋さんの青春とどうつながっているのですか?

小田嶋:う。

:馬脚が出たね(笑)。

「じゃあ車から降りたら?」のあたりですか(この意味はシーズン3の「僕の本棚を見つめる少女」は、春樹問題にアカンベーをするを参照)。

小田嶋:まあ、そういう話ですね。若干付き合った女性もいたし、別れた女性もいたけれど、だいたいこういう気分ですよね。君のことは忘れないよ、みたいな感じじゃないですよ。

:それはそうだよね。

小田嶋:それはそうですよ。だって、それがあったら、別れてないですよ。

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