「日経ビジネス電子版」の人気連載コラムニスト、小田嶋隆さんと、高校時代の級友、故・岡康道さん、そして清野由美さんの掛け合いによる連載「人生の諸問題」。「もう一度読みたい」とのリクエストにお応えしまして、第1回から掲載いたします。初出は以下のお知らせにございます。(以下は2021年の、最初の再掲載時のお知らせです。岡さんへの追悼記事も、ぜひお読みください)
本記事は2013年8月29日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
(日経ビジネス電子版編集部)
引き続き、「青春の音楽」をテーマに語っていきます。前回は岡さんから「若者たち」「いつまでもいつまでも」「海は恋してる」という前世の記憶が出てきました。今回は小田嶋さんの思い入れを語っていただこうと思いますが、それにしても小田嶋さんのタイトルは、何だか趣味のいい曲ばかりじゃありませんか。
「Don’t Think Twice, It’s All Right」(1963年) | ボブ・ディラン |
「Happiness is a warm gun」(1968年) | ビートルズ |
「Pale Blue Eyes」(1969年) | ルー・リード |
「僕のコダクローム」(1973年) | ポール・サイモン |
「恋に気づいて」(1977年) | 浜田省吾 |
小田嶋:順番に語っていくと、「Don’t Think Twice, It’s All Right」。これはいろいろな人がカバーしていて、俺的にはエリック・クラプトンのバージョンなんだけど、元歌はボブ・ディランの「くよくよするな」という有名な歌なんですよ。
岡:ボブ・ディランね。
これって実は相手をくさしている歌なんです

(写真:大槻純一)
小田嶋:「くよくよするな」と訳されているんですけど、「Don’t think twice」だから、「何度考えても仕方がないよ、これでいいのさ」という意味合いだと思うんですね。で、これは別れた女をディスる歌なんです。
※ディスる=否定する。ネット界で用いられているスラングです。
これはポップソングのお手本のような、素晴らしく良くできた歌。だから、「きれいなメロディーでいい歌ね」みたいに聴かれている感じがあるんだけど、「別れた女をくさしていて、結構毒のある歌ですよ」ということを私はご紹介したかった。だって日本の歌って、だいたいがカッコつけて、別れた女のことを褒めるでしょ。
岡:やせがまんしてね。
小田嶋:でも、この歌は「僕の名前を呼んでも、もうだめだよ。だいたい君はそんなこと、1度もしたことがないだろ」という感じで、若干の未練を含めながらも、相手をとてもくさしている、と。
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