岡さんは、これらの音楽をどういうシチュエーションで聴いていたんですか。
岡:深夜放送ですよね。部屋で1人、勉強するふりをして、ずっとラジオを聴いていたみたいなころ。
小田嶋:まさしくこれから70年代が始まるという。
岡:自分はまだ中学生だから、そういう恋の歌みたいなことがないわけですよね。でも、もうすぐ来るわけでしょう。
小田嶋:だから、こういうイメージで恋というものを形成してしまったんだね。お前、ここで恋のイメージトレーニングをしたのが失敗だったんだよ。
岡:完全に失敗だった。
照れて笑いをとりに行くところが早稲田の限界?
あの、このセリフは、泳げないから何だと言っているんですか?
岡:泳げないから、海が失恋して涙があふれたら困るよなあ、となっていくんですよ。
じゃあ、1人でいるわけ?海の前に?
岡:1人でいる。
海に向かって1人でぶつぶつ言っているの?
岡:海と話しているんだよ。
小田嶋:そう、海と話している。
それは聞くからにだめだわね。
岡:いや、だから恥ずかしかったんだよ。
小田嶋:そう、恥ずかしかったんだろうね。だから「海はすてきだな、恋してるからさ」というね、いかにもなポエムの中で、その「泳げないんだもん」という落ちになっていく。ポエムを詠んじゃったけど、やっぱり最後に照れて笑いをとりに行っちゃったというところが、早稲田の限界ですね。
(次回に続きます)

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