岡:その後にテレビがそれぞれの家にも来るようになって、いろいろ子供番組も見ていたけど、今も筋を覚えていて、強く残っているといったら、この5本ですかね。
便宜上、6本になっていますけどね。
岡:「ハリマオ」は忘れてくれていいです。で、「新日本紀行」。これ、地図帳と一緒にね、「今日は鳥取の砂丘だ」なーんて言ってさ。これはどういうわけか、一家で僕しか興味を持たず、毎週、僕だけが熱中して見ていましたね。
小田嶋:冨田勲のテーマ曲のやつか。あのカーンとかいう音が途中で入ってくる。
岡:これが国内旅行だとしたら、世界に行ったのが兼高かおるなわけですよ。当時は兼高かおるって、グラマーなちょっとセクシーな感じのお姉さんで、それで見ていたのも半分ぐらいはある。親には世界地図を見ている自分を見せながら。
カムフラージュをして。
岡:いろいろなことを学ぶ番組でもあった。
小田嶋:うそだよ、兼高かおるって、おばさまじゃなかったか。
岡:違う、違う、違う。あの番組は、兼高さんが31歳から62歳ぐらいまでやっていた。だから僕はその初期のを見て。
小田嶋:じゃあ俺は、後年のおばさまモードのときを見て、上書きされちゃったんだ。
岡:兼高かおるって、インドと日本のハーフの人で、最初、すごくエキゾチックに見えて。
小田嶋:俺の記憶の兼高かおるというと、「マオリ族の方々は下ばきをお着けになりませんのよ」なーんて言葉遣いで。「下ばき」って、要するにパンツのことなんだけど、「何?」と、こっちがびっくりするような、あの日本語感覚がすごかった。黒柳徹子よりも完璧な正しい山の手のお嬢様言葉ですよ。
岡:その後に出てきた「遠くへ行きたい」もよかったよね。
パンナムのステマ、いや…
小田嶋:だからあのころ、庶民が旅行に行けない部分を、テレビ番組が代行していたよね。
岡:70年代ね。
小田嶋:ああいう下地があって、その後にディスカバー・ジャパン・ブームが爆発したんだよ。
岡:兼高かおる世界の旅は、オープニングに飛行機が飛び立つ場面があってさ。
小田嶋:今はなきパンナム(パンアメリカン航空、1991年に破産)ですね。露骨なステマですね。
岡:いや、別に隠しているわけじゃなく、堂々とパンナムが出てきているから。
小田嶋:ステマじゃなくて、もう、露コマですね。
※ステマ=「ステルスマーケティング」のこと。ステルスマーケティングとは、番組の中で、さり気なくスポンサーの商品を何回も使うことで、視聴者にその存在を刷り込む広告的手法。
※露コマ=「露骨なコマーシャル」のこと。小田嶋隆の造語。世間にはオーソライズされていない。
Powered by リゾーム?