:北大受験に行った仲間で、朝、集まって行こう、と言い合っていたのに、それぞれが待ち合わせの時間より早く喫茶店に行っているわけ。

小田嶋:俺、水をこぼして、ふいてもらったのね。

:そう、水をこぼしているんだよ、こいつ。オマエ、わざとだっただろう。

小田嶋:いや、あれは偶然なんだ、偶然、偶然、偶然。

:そんなばかな偶然、普通はないよ。

小田嶋:でも翌朝、俺が早く起きて喫茶店に行ったら、岡がすでにいるんだわ。

青春のコントですね。

:北大には落ちたけど、7泊8日。あれ以来、あんなにゆっくり北海道へ行ったことはないです。

小田嶋:飛行機に乗ったのも初めてだったし。

:そうそうそう。でも親はたまんないよね。

テレビの話に戻りましょう。

:うん。そうだね。でも、あの女の子、どうしているんだろう。

小田嶋:きれいだったよね。俺らよりもちょっと年上気味で。

今ですと60歳ぐらいでしょうか。

岡・小田嶋:……。

さあ、テレビの話を進めましょう。

世界地図を見ながら、大人の勉強

:そもそもさ、最初は家にテレビって、なかったでしょう。

小田嶋:家にテレビが入ったのは、東京オリンピックのころじゃないかと思うんだよね。

:それも、もちろん白黒だよね。

小田嶋:うん。それでメキシコ・オリンピックのときにカラーにしたんじゃないかという気がするんだ。それが、標準的な日本の家庭の在り方でしょう。東京オリンピック以前のテレビって、今でいうと120万円ぐらいの感じの価格だったと思うんだよ。

:そのころのことを話すと、僕んちは長屋で、大家さんちにしかテレビはなかった。大家さんは自分の家を開放していて、みんなそこに行って、見ていたよね。

小田嶋:そうそう。テレビのあるうちは、人が見に来てもしょうがない、ということになっていた。

:みんなで見たのは、力道山のプロレスが代表だと思うけど、「ハリマオ」もたぶんそのころだよね。

小田嶋:昭和35年、36年かのあたりだから。

:5歳でしょう。幼稚園でしょう。

小田嶋:俺は頭の発達が遅かったのか、その辺はわりと覚えてない。

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