岡:変わらないと思いますね。
不幸なまま?
岡:そうじゃないですか。たとえローラと結婚したとしても、同じように家に帰ってこないだろうし、帰れない。自分の任務について細かいことは言えないし、不機嫌に黙りこくったまま、たまに家にいる人でしょう。
小田嶋:最悪ですよね。
岡:そういう意味では、女の人は彼に影響は与えていないよね。だってエドワードにしても、あんだけ優秀で任務に没頭していたら、家が多少揉めてようが、そんなの関係なくなっちゃうよね。だから彼は優秀だけど、女の人を不幸にするだけの人。ローラだって、いい迷惑だと思うよ。
小田嶋:あまりにミもフタもないけれど。
岡:だけど優秀じゃない我々が観れば、あの優秀さにはすごく惹かれるし、だからといって、あいつらが幸福なわけじゃないというので、また安心したりして、よくできた映画なんですよ。
日本でも、こういう映画はできると思いますか。
小田嶋:日本って、ああいう「グッド・シェパード」みたいなところのエリートというのは、実はいない社会でしょう。日本でエリートっていうと、あの経済産業省原子力安全・保安院とかの人とか。
良き羊飼いより「キュート」と言われたい!?
絵柄として全然違うものになりますね。
岡:だけど、あのN山さんにしたって、ものすごく優秀なんだよ。だって日本であの役になるには、家系とかのバックグラウンドうんぬんとかではなく、自力でなるしかないんだもの。ただひたすら猛烈に難しい競争に勝ち進んでいくという。
小田嶋:役人とはちょっと別の話になるけど、日本って歴代、小さい総理大臣が多かったでしょう。あれ、国際舞台であんまり目立っちゃいかん、というところを本能的に選んでいたんだと思う。だから竹下(登)さんとか、いい味を出していたでしょう。あと海部さんとかもサミットに行ったときに「キュート」とか言われていたでしょう。
岡:キュートって…。まあ、確かに、あの、いわゆる主要国の人たちの中に入ると、人間ではないよね。
小田嶋:だから湾岸戦争でも、「いいよ、お前らは」みたいなオミソみたいな扱いだったでしょう。あれで、森(喜朗)ぐらいのガタイを連れていくと、「君たちも軍隊を出してくれたまえ」みたいな話になるんだよ。
日本人もこれはこれで知恵者なんですね。
小田嶋:それに対して、とにかく俺たち以外は羊なんだから、というのがアメリカのエリートといわれるところの人たちでしょう。
そのアメリカのエリートにとって、国家、民主主義と個人の間にある葛藤をどう処理するかは、ものすごく重要なテーマのようです。
岡:だからハリウッドで「グッド・シェパード」が作られるわけだよ。
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