小田嶋:ヴィト・コルレオーネっておやじはさ、一種完全無欠な人間として描かれているんだよ。力もあるし、人望もあるし、一通りのことは全部あるんだけど、3人の息子は全部欠けたところがあって。長男はただの乱暴者でしょう。次男は意気地がなくて、三男は頭はいいんだけど冷血漢。それで俺が一番ぐっときたのは、パートIIで次男坊のばか・・・あいつがファミリーに殺される話。

ああ、ひとりぼっちのあいつ

:ジョン・カザールが演じていたフレド。ボートで撃たれちゃう次男でしょう。釣りに行こう、って甥っ子を誘うんだけど、甥っ子はその母親から一緒に行くのを止められて、それでファミリーの幹部のアル・ネリと2人で湖に行って。

小田嶋:結局、アル・ネリが一家の意向を受けてフレドを粛清するんだけど、あのシーン、バーンって銃の発射音だけが響いてさ。

:静かな湖にボートがポツンと揺れている。あれは悲しい。一族が無言のうちに、そうやって弟を亡き者にすることに同意して。フレド、あいつは悲し過ぎる(泣)。

小田嶋:フレドはさ、ケチな裏切り者で、弱虫で、どうしようもなくなってさ(泣)。

2人とも崩れっぱなし、乱れっぱなしです。

:たまには崩れたっていいじゃないですか。パートIIIでは、三男マイケルの娘の恋人で、ファミリーの後継者になろうと懸命に努める若者を、アンディ・ガルシアが演じていたよね。彼はマイケルの娘と別れて、ファミリーを継ぐことになるんだけど、ソフィア・コッポラが演じていたあの娘は、敵に殺されてしまった。

劇場の階段で撃たれて、「お父さん・・・」と呟きながら。

:あの結末も悲しかったけれど、アンディ・ガルシアには、あの後もずっと続けてほしかったなあ。

小田嶋:続けちゃうと、きっと変なものになっちゃうと思うよ。「仁義なき戦い」の広島死闘編みたいに。だって「ロッキー」も「5」「6」ではさ、

:めちゃくちゃになっちゃった(笑)。

小田嶋:そうでしょう。やっぱり「3」までが限度だよ、ああいうものは。でも、日本だと「ゴッドファーザー・パート10」ぐらいまで来て、現代ニューヨークを舞台にしてやっていたり、「仁義なき戦い」対「ゴッドファーザー」だったり、「ゴッドファーザー・パート12」ぐらいで「Hey!Say!JUMP(平成ジャンプ)」のやつが出てきたりなんかして。

:あり得る。「ロッキー」だって、本当にいいのは「1」だけだもんな。

生きるリアルに自信がないぼくら

それにしても、それらの物語の根底にある男同士の忠誠心や結束というのは、女性から見ると、かなりミステリアスなものです。

:生きることに対しての拠りどころが、男の方がないんじゃないですかね。子供を産んで、それを育てる、という女の人のリアルに対して、僕らが持っているリアルって、ほとんど覚束ないものなんだと思うんですよね。この連載で話した「グッド・シェパード」のCIAの姿(こちら)も、「最後の忠臣蔵」の武士道(こちら)も、みんな戦争とも似ているある種の危険な状況に通じているんだけど、リアルが薄い分、男の方が余計そういう「文脈」に弱い。

小田嶋:それで友情みたいな物語にもとても弱いんだよ。

:弱い。

小田嶋:なぜかというと、友情って本当はないから。

また、小田嶋さんがミもフタもないことを言い出しました。

(泣いたり、怒ったり。年末ラストに向かって続きます)

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「人生の諸問題」は4冊の単行本になっています。刊行順に『人生2割がちょうどいい』『ガラパゴスでいいじゃない』『いつだって僕たちは途上にいる』(以上講談社刊)『人生の諸問題 五十路越え』(弊社刊)

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