小田嶋:あの、ミッキーが自分の子供みたいなものなんだ、と思う感覚がそもそも俺にはよく分からなくて。だって、あれ、神妙な顔が絶対できない着ぐるみでしょう。明るいようだけど、実は異様な、後味の悪いシーンになって、さすがにスタジオも引き取れなくなっていたけど。

:だけど、再開のニュースでミッキーが出てくる前のディズニーランドのコミュニケーションはうまくいっていた。

避難先で、立ち見の大人気だったあるショーとは

小田嶋:ただ今回の災害で一番怖かった瞬間はいつかといえば、俺の場合は、アメリカ軍が逃げた情報を聞いたときだったね。

:逃げたね。80キロ圏外。震災後6日目にね。

小田嶋:あれだけの装備と知識と力と肉体を持った人たちに逃げられたら、俺たち、やっぱりもう終わりだな、って背筋がゾッとした。

:僕はそのころ九州にいたんだけど、どこも本当にがらがらでしたね。福島からはだいぶ離れているんだけど、まず中国人と韓国人の観光客が予約を全部キャンセルしたから、高いリゾートとか観光地はもちろん、どこでもすかすかの状態でしたよ。でも、もうそのぐらい、観光マーケットは中国人頼みなんだな、という実感はしみじみ持ちましたね。そのとき僕は、「こっちの方はどうなっているのかな」と思って、玄海原子力発電所に行ってみたんです、5日目に。

小田嶋:そういうときでも、ちゃんと知恵をつけに行くところが偉いよね。

:そうしたら、仮面ライダーショー、やってたよ(笑)。

小田嶋:日本中が大騒ぎしていたはずだけど。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏(写真:大槻純一、以下同)

:まったく人ごとですよね。その温度差にびっくりした。しかも混んでいるの。立ち見ですよ、仮面ライダーショー。

リゾートはがらがらなのに?

:仮面ライダーショーはいっぱい。

それは原発のそばでやっているんですか。

:そばじゃなくて、原発の敷地内でやっているんです。発電施設の横に、ここは安全だよ、という公園みたいな区域があるんだけど。

小田嶋:原発はどこでも公園みたいなものを整備して、人寄せみたいなことをよくやっているんだよね。うちの息子が小学校のときに夏休みの自由研究で柏崎刈羽に行ったら、後から原発推進派資料のようなのが、山ほど送られてきた。

:いや、素晴らしくきれいに整備された公園でしたよ。でも、考えてみたら、この横にあるあれは、福島と同じだぜ、と。

小田嶋:俺は地面が揺れるのは全然平気なんだけどさ。おおーっなんて言って。でも原発事故はやっぱり、すごく嫌だったね。

:しかも今だって、別に収まってもいないし。

あえて、「やっぱりガラパゴスでいいんじゃない?」

小田嶋:現在進行形だからね。福島原発事故もそうだけど、地震の後には、サッカーとか野球の外国人選手がどんどん帰ったでしょう。

:特にサッカーの人たちは多かったよね。

小田嶋:マルキーニョスなんか、オレは頑張る、なんて言っていたのに、避難先から仙台に帰ったその日に震度6弱の余震を浴びて、もうだめですって。

たとえばイギリスなんかでは、震度2の地震が起こったときに、もう大パニックだったとか。

:俺たち、3ぐらいは平気だもんね。

小田嶋:テレビのニュースで「伊豆沖、震度7の地震がありました」と流れてすぐに、「では次のニュースです」だから、その辺は感覚が全然違うでしょう。原発事故の放射能でも、外国人さんたちから見れば、こんな小さい国なんだから、この辺がやばかったら、こっちだってやばいでしょうと、日本列島ひとくくりだよね。

:だったらもう、みなさん、来てくれなくて結構です、とすら僕は思うけどね、個人的に。

小田嶋:カキとか、ホタテとか、外国にいろいろ買い占められている企業が救われた、という話は聞くけど。

:救われる場面もあるだろうし、でも、逆に輸出だって止まるわけだよね。それも食品だけじゃなく、パソコンとか車とかも。

小田嶋:そうなると日本はリアルガラパゴス化ですよね。

:じゃあ俺たちの予測はほぼ合っていたという(笑)。

小田嶋:原発鎖国ですよ。将来的にはもう、ガラパゴスゾウガメみたいに島ごとに違う進化をしていく形で、ダーウィンフィンチみたいな不思議なくちばしが発達して、日本人って別の種になっていくわけだ。

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