濱野:ツイッターで炎上といえば、少し前に、大桃美代子さんがいきなり爆弾発言をする、という騒ぎがありましたけど、あれは炎上というよりは、ただみんなが、「おっ、そんなこと言っていいのかよ」と面白おかしく注目しただけで、別に炎上とは言わないですよね。まあ、関係者の皆さんは大変だったと思いますが。
小田嶋:あの程度の不倫騒動ならば、本人が自爆しない限り、深刻な騒ぎにはならないですからね。

濱野:炎上する可能性があるとすれば、基本的にはハッシュタグぐらいですね。「このハッシュタグで議論しています」というのは、要するに「2ちゃんねる」の掲示板などと同じ形式で、誰からも共通して可視化される「場」になってしまうので、そこを「荒らしたい」という人が出てくると、止めることができない。特定のハッシュタグへの書き込みを防ぐブロックのような機能は存在しないからです。でも、ハッシュタグだって、放っておけば1週間ぐらいで消えちゃいますし。
小田嶋:「日経ビジネスオンライン」で余計なことを書くよりも、はるかにましというか(笑)。
そうですね。
小田嶋:このサイトで、変に尖閣列島みたいなことについて書くのに較べれば、ツイッターで適当なことを言っていることの方が、ずっとどうってことないかな、って。
確かに「ア・ピース・オブ警句」のコメントにはキビしいものが多いというか…。
小田嶋:あそこで余計なことを言うと、ちょっと袋だたきがありますけどね。
読者のみなさん、どうぞオダジマさんに温かい目を注いであげてください。
小田嶋:そう言うキヨノさんが一番キビしい、という感が、私にはあるんですけどね。
濱野:(笑)。とはいえ炎上については、ツイッターはとても優秀なアーキテクチャだと思いますね。
ネットが壊す壁と新たに作る壁
小田嶋:もう1つ、濱野さんにお聞きしようと思っていたのが俺にはありまして。それはインターネットが、物理的な時間の壁、場所の壁を壊していくことについてなんですけど。
『アーキテクチャの生態系』で、コミュニケーションの同時性/非同時性について書かれていますよね。それは、コミュニケーションをするときの時間と距離ということになるのですが。自分たちが大学生だったころは、距離の壁とか時間の壁というのが、明らかにあったわけですよ。遠くの人は連絡が取りにくいし、長距離電話はすげえ金が掛かったし、同時に1つの場所に集まらないとコミュニケーションが取れなかったし、そもそも集まらないと話ってできなかったでしょう。
でも私が息子なんかのミクシィのコミュニケーション(「前回参照」)を見ていて思うのは、時間と距離の壁はネットの登場で確かに取れているんだけど、そうすると、じゃあどうやってミクシイのグループができたりできなかったりするのか。時間でも距離でも場でもないのであれば、そこには違う壁が機能していくのではないか。それは文化的な壁だったり、階層的な壁だったりするんじゃないか、という若干、嫌な予想が出てくるわけです。
濱野:なるほど、それは非常に重要な指摘だと思います。この対談の前回で、私は「ソーシャルメディアというのは、敬語を使わない関係が一番、効力を発揮しやすい」みたいなことを言いましたけれど、ネットというのは、そもそも似た者同士が集まるところなんです。
例えばツイッターはまさしくタメグチ的な世界ですね。言葉遣いが似ていて、興味、関心が似ている人同士だけがタイムラインを擬似的に共有して、しゃべっているメディアです。それは言葉を変えて言うと、文化資本というか、文化的な背景を共有している人同士しか集まらないコミュニティということなんですね。
小田嶋:それを今の段階ではっきりと階層分化に結び付けることはできないだろうけど、現存する地域コミュニティみたいなものに対しては、もしかしたらネガティブに働く可能性はあるんじゃないかな、って。
濱野:それはあり得ますね。
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