濱野:それはゴールデンウィークの最終日に、一日中アニメソングを流す、というラジオ番組だったんですが、ゴールデンウィークの、しかも最終日といったら、普通、みんな外に出掛けているだろうというタイミングですよね。でも日本のアニメオタクたちは、ずっと聴いていたわけです。
小田嶋:はいはい、あのときのツイッターの実況はすごかったですね。
小田嶋さんは、やっぱり聴いていたんですね。
濱野:ツイッターに「アニソン三昧」のハッシュタグが立ったんですが、ほかの国の人から見ても、日本人が見ても、「何だ、このハッシュタグで会話されている内容は?」というものだった。と言うのも、みんな、ただひたすらラジオの内容を実況しているだけ、というか、歌詞をただタイミングでつぶやいているだけで。
小田嶋:「キター」とか言っているだけでね(笑)。
濱野:そうなんです(笑)。でも、そんなしょうもないハッシュタグが、そのとき、世界で一番使われたハッシュタグになっちゃった事件というのがありまして。
それはすごい…。
濱野:日本のネットって、そういう「マイナーでしょうもない会話こそが最もメジャーになる」という逆転現象がすごく強く働くんですね。新年には「明けましておめでとう」がツイッターで最大瞬間風速一番のツイートになったりとか。

小田嶋:年明け早々にも、「七草がゆ、こんな大勢食っているのかよ」というのが、ツイッターで大騒ぎになっていましたよね。「七草がゆ、なう」ということで。
濱野:日本人はあの「○○なう」という言葉を、好んで使っていますよね。あれはちょっと面白い。
小田嶋:みんな七草がゆを食っているなら、俺も食ってみようか、とか、何かあるんでしょうね。
濱野:そうなんですよ、普段は絶対に食おうと思わないのに、みんながそんなに食っているなら俺も食うよ、みたいになって、「なう」が伝染していく。七草がゆでも「紅白歌合戦」でも、何でもいいですが、「○○なう」という言葉によって、「今、この瞬間を共有する」ということを日本人が久しぶりに取り戻したという感があります。
小田嶋:だから俺もそろそろツイッターに参入してみようかな、という気がしてきたんですよね、何だか楽しそうだから。
以前、参入しようと思ったけど、やめといてよかった、とおっしゃっていましたよね。(「世間なんて相手にせずに、『ガラパゴス』でもいいじゃない?」参照)
小田嶋:いや、ツイッターは、のぞくことは続けていて、完全撤退はしてないの。ただ、参入するには用心が必要かな、と思っていたので。
どういう心境の変化ですか。
小田嶋:何となく勘所がつかめてきたというか。俺がツイッターなんかを始めたら、絶対に問題発言をして、変な炎上を起こすんじゃないか、という恐れをたくさん持っていたんだけど、でも、他人のつぶやきを眺め続けたら、こういうものは炎上して、こういうものは炎上しないんだ、ということが何となく見えてきた。だったら、これなら大丈夫そうだな、と。
じゃあ、それはもう、ぜひやってもらいたいですね。
ツイッターはみんなが街角ですれ違っていくようなもの
濱野:確かにですね。小田嶋さんは以前、「ミクシイ」はもはや集まる人が増えすぎて、「口うるさい常連がとぐろを巻いている場末のスナック」のような場所になってしまったと表現されていましたよね。でも、ツイッターはそれこそ1つの「場」というのが存在していなくて、勝手にみんながつぶやいて街角ですれ違っていくようなものですから、たとえ炎上してもそれほど可視化されないし、長期化しない。炎上に関してはそれほど心配されなくても大丈夫ではと思います。
その仮説を立証するということで。
小田嶋:そうそう、ツイッターは案外、炎上が出にくい、ということが分かってきたのよ。
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