高木:才能一番で入ってきている人間たちだから、ほかに何もいらないわけですよ、言ってみれば。

:若いときに困らないもんね、すごくうまければ。高校も大学も無試験だしさ。

高木:そういうところで育ってしまうと、モノを考えるということが、おっくうになってしまうんですよ。

高木さんは違いましたか。

高木:いや、僕も現役時代はそうだったと思いますよ。ただ、自分がその世界で生きていくためにはどうしなきゃいけないか、ということはすごく考えました。それで、最近は生まれて初めて「勉強しよう」と、そんな気持ちになってきました。

ええっ。

:いや、本当に最近、高木はすごいんだよね。50歳を過ぎて。

高木:はい。この歳になって初めて。例えば人と接するだけでも勉強になることってあるでしょう。僕は人と接する機会はたくさんあったのに、今まではそれは大きく意識していなかったわけ。ある人から言われた言葉や、示された態度というのは残っている部分もあるんだけど、自ら何かを学びたいとか、吸収したいだとか、そういう心境になったのは初めてかな・・・。

一同 (あまりの素直さに虚を突かれる)

高木:もうベッドの周りの景観が変わっちゃいましたから。

ベッドサイドに置く本のタイトルが変わったとか?

高木:いやいや、そもそも本なんてなかったんだから(笑)。でも、最近は本が山積みになっていて。今まで本なんか持ち歩いたこともないのに、今日は2冊もカバンに入れていますし。

高木さん、教養の目覚め

ちなみに今日は何を?

高木:蓮實重彦の『プロ野球批評宣言』。

一同 ・・・・・・。

:それはさっき僕が渡したんだけど、なかなかいないよ、蓮實重彦を読んでいるプロ野球解説者って。

高木:それと、孫子の『兵法』。

これまた。

高木:最初のきっかけは瀬島龍三の『祖國再生』という本を読んだことだったんですけど、瀬島さんという人が孫子の言葉をたくさん引用しているんですね。「賢者は歴史に学び、愚者は経験にしか学ばない」とか。そこから興味がどんどんと広がっていって。

:高木は今、ようやく17歳のレベルに来たところなんだよ。

じゃあ今度、「もし高木豊が孫子の『兵法』を読んだら」企画でも立ち上げましょうか。

:高木に高校生の制服を着てもらってね。

高木:セーラー服を俺が?

:ばかだな、学ランでしょう、普通は。

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