高木:いや、叩いた方が本人のためになるんです。だって勝負師だったら、同情されるのが一番嫌なことなんですよ。同情されたら、ここ一番の責任があやふやになって強くならない。だから、そこが日本の一番の弱さです。

:岡田さんは、今、高木が言ったことはもちろん分かっていて、もう一切マスコミに出てこないですよね。だから、ベスト4と言ったのに取れなかった責任を、彼はちゃんと取ろうとしたと僕は思いますよ。

高木:岡田さんが立派だったと思うのは、あのメンバーを「チーム」にしたことですよね。試合が終わった後に、メンバーが「最高のチームだった」と言えたことは、指揮官としては失敗ではなかったということです。

岡田さんの人生を体験してみたいと思いましたか。

:経験してみたいですよね。相当きついと思いますけど。僕はサッカーはしたことがないんだけど、南アフリカからチームが帰国したときの映像を見て、何だかうらやましかったな。だって、プレーしたあっち側と、見ていただけのこっち側とは全然違うもの。

高木さんもですか。

高木:それはもちろんそうですよ。

:ね。こっち側だもん、俺たちは。ミスター・ホイに似ているとか、俺もいろいろ悪口を言っていたけど(笑)、でも、早稲田の同期としては、やっぱり陰ではものすごく応援していた。

高木:それは早稲田でなくとも応援するでしょう。僕だって応援していましたよ。ただ、感動はしたけれど、だからこそ、ここで甘い言葉を掛けるのではなく、検証しておかなくちゃ、と思っている。サッカーは息子たちもやっていますしね。

高木家は長男の俊幸さん、次男の善朗さん、三男の大輔さんの3兄弟がみな、サッカーの選手なんですね。俊幸さんは東京ヴェルディ所属の選手ですし。(「父親次第」)

高木:息子たちはまさしく次世代のプレーヤーでしょう。次に彼らがベスト8、ベスト4に行くためにも、大試合の後には厳しい検証をしないとだめだと思います。

もしあの場面でPKをはずしていたのが息子さんだったら、お父さんとしてどうしますか?

同情するくらいなら、ばかやろうと言ってくれ

高木:帰ってきたら、即、ばかやろう、ですね。今まで何をやっていたんだ、そこがお前の精神力の弱さだ、と言い倒します。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏

:あれさ、チームには中村憲剛も玉田もいたじゃない。あいつらはストライカーだよね。何で駒野に蹴らしたんだろうか。

高木:フルタイムでゲームをがんばった選手に責任を取らせる、ということだったと思いますよ。

:だけど普通に考えたら、フルタイムでゲームをした後は疲れているよね。だったらやっぱり、中村、玉田の2人に先に蹴らせた方が、確率は高かったと思うよね。ただ、駒野ってPKの名手といわれていたし、それまでも試合でPKを外したことはなかったんだよね。

高木:でも、ワールドカップの1戦で、名手でも何でもないことが分かりましたよね。

:まあ、やっちゃったよね。

高木:選手として信頼を得るにはものすごく時間がかかるけど、その信頼を失うのは一瞬ですからね。だって、あの場面を初めて見た人にとっては、駒野はPKが下手な人でしかないから。

:マスコミに出た駒野本人のコメントも、僕に同情はしてほしくない、というものでした。選手としての当然のプライドだよね。でも、彼の本意に反して、報道というのは「よくやった」みたいな流れになって、世の中もそういう空気になっていった。そうなるともう、選手としてのプレーの内容や適性を批評しにくい、という感じになる。

高木:そういう空気は、選手本人のサッカー人生にほとんど関係ないんだけど。というか、むしろ負い目になる。

:話を岡田監督に戻すと、テレビでは結構いろいろな人が謝っていたよね、「岡田さん、事前に批判してすみませんでした」って。あれも結構珍しい風景だったというか。

高木:日本って、とにかく試合も始まってないうちから騒ぎ過ぎ。岡田ジャパンはワールドカップ以前の韓国戦や、コートジボワール戦に負けた時からもう、ひどい報道のされ方をしていたでしょう。2004年のアテネ五輪の時、日本の野球チームで僕はコーチを務めたのですが、あの時も五輪予選の前に壮行試合をして負けたんですね。チームも報道も、もうお先真っ暗、という雰囲気で、誰も何も言えませんでしたけれど、ただ五輪に向けては、その壮行試合がすべてじゃなくて、調整期間の中の一試合だったわけですよ。

:そりゃそうだよね。

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