小田嶋:俺が就職した会社は、基本的に東大閥の会社だったんだけど、東大閥、早稲田閥、慶應閥で互いに足を引っ張り合って、会社の利益を阻害した過去の歴史があったらしいのよ。だもんで、その反省として、学閥を作らせないために、地方の駅弁国立出身のやつが異常に多かったの。

:ばらけると、閥ができないということか。

小田嶋:ところが、これが早稲田の油断のならないところで、俺も含めて新人4人が早稲田からというのは、そうは言っても、社内では一応最大派閥だったんだよ。

 そうしたら入社前のある日、人事部の早稲田OBから「お前らに一応教えておくことがある」と、その4人だけに呼び出しがかかったんだよ。

:何を教えてくれたの?

小田嶋:「こういうときは、こう振る舞わないとだめだぞ」みたいな、人事部経由では教えてくれない新入社員豆知識みたいなことだよ。まあ、ありがたいなとは思ったんだけど、次は早稲田OBによる討論会が後日ある、ということで、「これは会社のやつには言うな」と、口止めされるの。

:秘密結社的になっていくんだ。

小田嶋:そうそう。彼らの計算からすると、例えば、その人事部の早稲田OBが10年後に課長になるかならないかという時が来たとする。その時に、子飼いの部下が何人いるのか、あるいは自分を引き立ててくれる上司が何人いるか、がポイントになる。

:その時、頼りになるのは早稲田ということか。

小田嶋:その場合、彼が一言、声をかければ早稲田の人間が15人集まりますよ、とかいうことが重要になる。その15人にとっても、彼に付いていけば社内で確固たる地位が得られることが、あり得るかもしれない、と。彼らは、そういうことの下地作りをしていたわけですよ。

地盤固めに便利な早稲田

:まあ、結局、小田嶋は1年ももたずに辞めたわけだから、

小田嶋:俺、会社のそういうところが、とてもだめで。というか、早稲田のそういうところが、すごく嫌で。

:小田嶋が辞めた後に、早稲田閥というのはできていった可能性があるな。

小田嶋:あるよね。だから会社の閥ってさ、表だっては解体しても、やろうと思えばできちゃうのよ。俺の友達が入った製薬会社は、新入社員で入ったその日に、専務閥と常務閥に分かれたって言ってたし。

:そんな島耕作的なことが。

小田嶋:「いついつにゴルフコンペがある。お前は専務の車の運転をしろ」「えっ、僕がですか」「お前、免許持っているんだろう」「分かりました、じゃあ、します」ということで、日曜日に専務の車の運転手を務めたら、「ということは、お前は専務閥だぞ」と。

:そうすると、二度と常務のゴルフコンペには参加できなくなるだろう(笑)。

小田嶋:わけが分からないうちに、そうやって組み込まれていくわけだ。それは役職閥だけど、一般の会社で、どういうところで閥を作るかというと、結局、学校が一番手っ取り早いんだよ。そこで早稲田は数が多いから、すごく物を言うんだよ。

:物理的にね。

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