小田嶋:それと、慶應は英語と小論文ができないとだめだったの。早稲田は受験科目で、社会科が猛烈に難しい問題になっていて、だから「丸暗記がお得意な人は早稲田にいらっしゃーい」みたいな感じがあった。俺なんかは明らかにそっちの方だったからさ。

:確かにね。

小田嶋:でも早稲田に入っちゃうと、これが早稲田の……何ていうんだろう、校風というものじゃないんだけど、俺がすごく最後までなじめなくて、長いこと違和感を持ち続けた独特の、どうにも耐えがたいものがあって。

何ですか、その「ぬえ」みたいなものは。

小田嶋:ある田舎の人たちの、何て言うんだか、よく言えばたくましさなんだけど。

無神経な感じ?

:下品さ、だよね。

小田嶋:そう、田舎のムードの。成り上がりっぽさと言うよりも、『俺の空』っぽさみたいな、早稲田独特の「高下駄マッチョ」があった。

岡さんも同意しますか。

:ありましたね。それは、学ランに高下駄を履いている、という外見的なことじゃなくて、気持ち的な面で。とにかく田舎から早稲田に入ってきたやつは、気持ちが高揚していて、ある種はしゃいでいるんですよ。

小田嶋:そう。俺はやるぜ、みたいな、やる気満々な感じ。

:都立校の出身者は、本当は実力的にはそうじゃなくても、「ああ、国立だめだったな」というマインドセットで早稲田に行く、というのが基本的なあり方じゃないですか。 そこに、「俺の空」みたいなやつが田舎からやって来て、「友達になろうぜ」とか元気に言われてもさ、「何だよ、こいつ」みたいに引いちゃうところがあるんだよ。

ダルがるのが東京人だ!

小田嶋:そうそう。目指すところや、欲望の方向はそんなに変わらないんだけど、その表現の仕方というか……。物の言い方のマナーみたいなところで、すごく積極的だったり、「やるぜっ」といった言い方だったりは、都立の人間ってしないのよ。

 「だったら、どうする~?」「じゃあ、一応やる~?」みたいな、そういうちょっとダルい感じのノリが我々なのよ。「マージャンやる?」と言われた時に、「おお」と言って前に歩き出す感じじゃなくて、「まあ、やってもいいけどさ」とか、いちいちダルがるのが俺たちなの。

現在の早稲田大学構内は、かわいい女子学生も増えて、雰囲気、変わっています

ダルがるのが東京流、と。

小田嶋:そう。そして、そのマナーが早稲田では、すごく憎まれるわけ。

:ノリが悪いわけじゃないんだけど、田舎のやつからすると、「あいつ、何を気取っているんだよ」となるんだよね。

小田嶋:こっちはこっちで、村社会のような、誰もが村人のような、やたらべたべたしている感じに入っていけないんだけど。それで、俺、気付いたんだけど、この間、ちょっとフェミニズムの人たちと、がちゃがちゃありましてね。

ありましたね。ツイッターに端を発した例の件。

小田嶋:俺はマッチョというか、男の世界の男くささというものに対して、激しい嫌悪感を長いこと持っていて、その点でフェミニズムに対して、あるシンパシーを持っていたの。だけど俺のフェミニズムへのシンパシーは結構、見当外れだった、ということが、あの件で分かった。

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