小田嶋:ただ、慶應のやつで「慶應が嫌いだ」って言うやつはいないけど、早稲田は多くの人が言いますよ。慶應の連中は素直に諭吉先生を尊敬しているの(笑)。

:まあ、重信先生とは言わないな。

小田嶋:重信先生はあまり尊敬されてない。そこだよね。

 津田大介くんと以前に対談した時に、彼が「早稲田はうざくて、慶應はキモイ」と、ちょっと気の利いたことを言っていたんだけど、分かる感じでしょう。早稲田のうざさと、慶應のキモさ。

 数年前に、慶應の在学生か卒業生だかが、ディズニーランドを借り切ってイベントをやって、みんなで写真を撮りまくってツイッターに流したことがあったのよ。そういうことって、お金があるとか、ないとかじゃなくて、自意識の問題なんだと思うんだけど、「俺たちはこれをやっちゃってもいい人間なんだ」と、恥ずかしげもなく思っちゃっている感じが、慶應の慶應たるところなのよ。

:それがどういうことなのか、よく分からないけれど、とにかく小学校からあるようなところに行くのはどうなの、という気持ちが僕にはありましたけどね。そもそも小石川高校から慶應に進学する、というのは心理的にあり得ないと思っていた。

慶應のテニサーに喰らったトラウマ

小田嶋:そういう地勢的な遺風のようなものは、我々世代にはまだ残っていましたよ。都の西北まではいかないけど、都の北半分にいる我々は、慶應って言われても、イメージできなかったのよ。でも、我々の高校の仲間で、どこからどう見ても慶應じゃないやつが、慶應に行ってましたけどね。

:柔道部のキャプテンですよ。「国士舘、全然OK」みたいな、ガタイのいいやつ。

小田嶋:そいつが慶應に入って、「こりゃいかん。俺は自分を作り替えねばならぬ」と、自己改造を図って入ったのが、某テニスサークルですよ。

:あいつにテニスなんて、絶対に向いてないよ。

小田嶋:その某テニスサークルは、慶應の中でも一番慶應、ザ・キング・オブ慶應のところだったんですよ。それで俺はそいつに招かれて、そのテニサーのスキーツアーで苗場プリンスに行ったことがあるの。

:何だよ、お前は。結局、そういう話ばっかりじゃないか。

小田嶋:その時に、どれだけ浮いたことか。

やっぱり。

小田嶋:だって、スキーバスを借りて行くっていうのに、BMWとかで来るのが大半なんだよ。それで、「じゃあ、ツアー最初のミーティングをやります。メインダイニングに集合です」とかお達しが来るんだけど、その苗場プリンスのメインダイニングって、コース2万円とかなんだよ。

:スキー場だったら、ライスカレーかカツ丼だろう。

小田嶋:言うほどたいしたホテルじゃないんだけど、そういうものはない。それで早稲田から行った俺たちはひそひそと、「こんなの食えないぞ。一番安いメニューはどこだ」って、目を皿のようにしてメニューを眺め、スープとかサラダとかが1800円で一番安いことが分かって、「しょうがない、俺はサラダを頼むよ」「じゃあ俺はスープだ」って、泣きそうでしたね。

:お前、何で行ったんだよ、そんなところに。

小田嶋:いやあ……。

(→どこまで行ってもヤオイで続きます。)


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