小田嶋:社会学科は、政治、経済、社会といったすべての原論を勉強するの。だから、実態は教育学部というより、そこだけ教養学部に近かった。で、俺はどちらかと言うと、商学部に思い出があるんだよ。

 商学部に小石川(高校)出身のソネってやつがいたでしょう。ある日、ソネとばったり会ったのよ。で、「商学部でこれから猛烈に楽しい授業があるから来ないか」と言うわけよ。つまり、そこのスペイン語の授業に、女学館短大の女の子たちが大挙して聴講に来ていて、合コンみたいになっている、と。

行ったんですか。

小田嶋:行ったんです。で、行ったら、その先生が半分白髪なんだけど、昔で言ういわゆるナイスミドルの変な先生でさ。

:ナイスミドル、死語だな(笑)。

小田嶋:そのナイスミドルが長髪でさ。

:男?

小田嶋:当然男なんだけど、何かチャラいんだよ。

:スペイン語だしな。

小田嶋:その先生が女学館短大でも1コマ持っていたらしくて、そこで「自分は早稲田でも授業を持っている」と言ったら、女学館の子たちが「行きたい」と言いだしたらしくて、「じゃあ、君たち、来たまえ」って、勝手に合同授業にしているの。だから女学館の女の子たちが先生と一緒に、何十人もやってくるの、どーって。

早稲田とは、門を閉じない大学である

:だったら行くな。

小田嶋:それがまた女子たちがみんなすごい化粧をして、強烈に気合いが入っているのよ。ともかく早稲田で見たことがないような感じで、粉が周囲に飛んでいそうな雰囲気でさ。

:授業はどうだったのよ。

小田嶋:でかいラジカセを置いて、「ベサメ・ムーチョ」の歌をかけていた。その訳を教えてくれるんだけど、これが「我に口づけしたまえ、接吻したまえ、接吻せよ」っていう繰り返しなんですよ。

:くだらねえ(笑)。

小田嶋:めちゃくちゃくだらないんだけど、素晴らしく楽しい授業でした。俺、「次も行くよ」とソネに言ったんだけど、次から呼んでもらえなくなったね。

今回も予想通り、ヤオイに雪崩を打っていますが、せっかくの大学再訪の場。もう少しちゃんとした話は出ないものでしょうか。

:確かに小さな思い出話は、もうさんざんやっちゃったものね。

もうそんなのはいらない、という心境です。

:早稲田とは何なのか、ということを大きくとらえた方がいいと思う。

そうです、欲しいのはその、がっつりした視点です。

次ページ オダジマ、母校への敵意を語る