小田嶋:ここを下ったところに、六義園みたいな、ちょっといい感じの公園があるの。

:本当だ。ここ、いきなり京都じゃないか。躑躅も咲いている。

それは躑躅ではなく、皐月ではないかと。

:そんなの、いちいち区別が付かないから、いいんだよ。

小田嶋:俺は、躑躅と髑髏の区別が付かないんだけど。

※躑躅(つつじ):ツツジ科の植物
髑髏(どくろ):ヒトの頭蓋骨

「新江戸川公園」はかつての細川侯爵邸の庭園。この隣に「永青文庫」「芭蕉庵」「椿山荘」があり、文京区の面目躍如なエリア

(目の前に流れる神田川を渡ると、高台の閑静な景色が、一気に早稲田の雑踏の光景に変化する。目の前にあるのは、リーガロイヤルホテル東京)

小田嶋:このリーガロイヤルというのは、バブル後に早稲田の敷地内に再開発したもんでしょう。当時はちょっと「おおっ」となったけど、今となっては何だか安っぽいホテルになっちゃったね。

:だいいち交通の便がよくないじゃない。

小田嶋:そうね。出来たばっかりのころは、ヒルトン、シェラトン、リーガロイヤルなんじゃないか、という気持ちを持っていたんだけど、年月とともに、何かを失った感がある。で、大隈会館ってのが、隣にあるだろう。

:これね。

小田嶋:俺、結婚式ここだから。

:俺は呼ばれていないぞ。

小田嶋:お前の時だって、俺は呼ばれてないぞ。

ユキチとシゲノブ、越えられない壁

:互いに呼ばれていないし、呼んでいない。高校の時の友達なんて、そもそも呼ばないよ。

小田嶋:大隈会館に話を戻すと、ここは大正時代の建物で、大隈重信さんのお住まいだったところですよ。

芭蕉庵の大隈版みたいなところなんですね。

小田嶋:西洋風と和風が折衷していて、なかなか重厚ないい建物なのよ。で、俺、この間から大隈さんと、ライバルのほれ、あの人、福沢諭吉を比べることをしているんだけど、諭吉と比べると、大隈はやっぱり2枚ぐらい格が落ちるんだよね。

 諭吉は先見の明があるし、なかなか商売上手だし、あと、いろいろな日本語を編み出して、いい言葉をいっぱい残しているし。「経済」とか「文明開化」とか「独立自尊」とか、そういうのは全部、諭吉の作。諭吉は調べれば調べるほど、いろいろなところが偉いんだよ。

:そんなこと、言うなよ。大隈さんは僕が生まれた佐賀の偉人で、佐賀では「なんで諭吉が一万円札の顔になって、大隈さんがならないんだ」ということで、市民運動まで起こっているんだから。

小田嶋:でも、重信公は早稲田でも学生にそんなに尊敬されていない。慶応の人はみんな、福沢諭吉を尊敬しているんだよね。あそこの人たちは「諭吉先生」って言いますからね。

次ページ 短大生、襲来