「日経ビジネス電子版」の人気連載コラムニスト、小田嶋隆さんと、高校時代の級友、故・岡康道さん、そして清野由美さんの掛け合いによる連載「人生の諸問題」。「もう一度読みたい」とのリクエストにお応えしまして、第1回から掲載いたします。初出は以下のお知らせにございます。(以下は2021年の、最初の再掲載時のお知らせです。岡さんへの追悼記事も、ぜひお読みください)
本記事は2014年9月4日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
(日経ビジネス電子版編集部)
「人生の諸問題・放浪編」、小石川の次は、出ました!早稲田です。
高田馬場駅前の日本一安い居酒屋、新橋の4分の1以下の値段で朝まで打てる雀荘、口を「へ」の字に結んだ大隈さんの銅像……と、なぜかおしゃれな要素に縁の薄い界隈。今もぬぐえぬワセダの匂いに、むせび泣く人も多いことでしょう。
(前回から読む)
今日の早稲田歩きは、高田馬場から早稲田通りで大学に向かう、という王道ではなく、目白台から出発し、坂を下って早稲田を目指すという逆ルートです。
小田嶋:成り上がりじゃなくて、成り下がっていくルートですね。
岡:とにかく大学時代の合コンは、ランクに応じて、「高田馬場でいい」という時と、「これは目白じゃなきゃな」、という時があったんですよ。
小田嶋:馬場とは離れた場所でやらないといけない時があった。
岡:そうしないと、柔道部のやつとか、もういろいろなのが来ちゃって、訳が分からなくなっちゃう。目白での待ち合わせは気分として大事だったんだ。

(ということで今回は目白台で待ち合わせをして、「和敬塾」横の「幽霊坂」を下り、「新江戸川公園」「芭蕉庵」「椿山荘」に立ち寄って、「神田川」を渡った後に早稲田を目指しています)

「和敬塾」は男子専用の学生寮で、早稲田大学に入学した村上春樹さんも一時、入寮していたところ。『ノルウェイの森』のワタナベトオルが暮らした寮もここがモデルになっています。
岡:ここの坂はいいね。
昼もうっそうとした気配の坂は、その名も幽霊坂です。
小田嶋:今日は坂を下っているけれど、早稲田から来る時は、ここを上がるわけだよ。本女(日本女子大学)に彼女がいると、この坂を上って会いに行くことになる。そういうやつのことが、うらやましかった。
それは楽しそう。青春の「痛快ウキウキ通り」((C)小沢健二)ですね。
岡:本女に彼女がいればの話だけどね。
小田嶋:そう、いればの話だけど。
ただ、この坂は夜は歩いちゃいけない場所のような気がします。
小田嶋:そうね。昔は追いはぎが出ましたからね。
岡:昔って何年前のことだよ。
小田嶋:江戸時代だよ。
岡:昔過ぎるじゃないか。
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