「日経ビジネス電子版」の人気連載コラムニスト、小田嶋隆さんと、高校時代の級友、故・岡康道さん、そして清野由美さんの掛け合いによる連載「人生の諸問題」。「もう一度読みたい」とのリクエストにお応えしまして、第1回から掲載いたします。初出は以下のお知らせにございます。(以下は2021年の、最初の再掲載時のお知らせです。岡さんへの追悼記事も、ぜひお読みください)
本記事は2011年11月14日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
(日経ビジネス電子版編集部)
お待たせしました。間が空いてすみませんっ。「人生の諸問題・映画編」、前回からの続きを鋭意、進めていきます。そして今回も映画内容のネタバレ、いっぱいあります、ごめんなさいっ。
岡:この間、新聞のコラムで取材を受けたんだけど、そこで紹介されていた僕の肩書が「CMディレクター」になっていてね。でも、言っておくけど、僕はCMディレクターは、やったことないのよ。だから新聞記者って、何ていい加減なんだろうか、って。
小田嶋:たぶん新聞記者は、CMディレクターとかクリエイティブプロデューサーとか、全部ごっちゃになっていて、分からないんだよね。
岡:もう全然いい加減なんだよね。
小田嶋:だいたい読者だって区別がついてないから。
岡:そうだね。
そのコラムを読みましたが、私も区別がつきませんでした。
岡:おいおい。
小田嶋:だから広告屋さんとか書かないと。
岡:まあね、普通に広告制作者と書いてくれればいいんですよ。
小田嶋:でも、片仮名を入れた方がいいかな、と、ちょっと気を遣ったんじゃない? それで、プランナーとかプロデューサーよりディレクターの方が偉いと思って。
岡:いや、俺、プロデューサーじゃないんだよ。
小田嶋:違うの?

岡:うん。プロデューサーってお金を管理する人だから。というか、さっき小田嶋が言ったクリエイティブプロデューサーなんて肩書は、そもそも広告界にないよ。お前が間違ってどうすんだよ。俺、クリエイティブディレクターという肩書なんだよ。
小田嶋:そうなの?
岡:正確にはそうなんだよ。プロデューサーでもないし、CMディレクターでもないの。
一同:そうなんですか?
岡:ふざけるなよ。ここにいる誰も僕の仕事を理解してないじゃないか(笑)。みんなとは結構長い付き合いなのに。
小田嶋:広告制作者・岡康道、代表作は「ダイハツ・ミラパルコ」とか言いだすんだよな。(「人生の諸問題」「いい映画」は、1年あればほぼ全部見られるよの5ページ目、そして「テレビCM」と「家族」と「フッキング」との3ページ参照)
岡:やめてよ。そんな昔の、あまりにも昔の話を。
課題映画3本を一気見しました
ということで、久々の「人生の諸問題」。前回、途中まで盛り上がっていた映画編の続きを再開したいと思います。今回は、映像制作のプロである岡康道さんに、トークのネタとなる「課題映画」というものを3本挙げていただきました。
<クリエイティブディレクター、岡康道が挙げる3本の課題映画>
○「悪人」2010年・日本映画
原作:吉田修一 監督:李相日 主演:妻夫木聡、深津絵里
○「告白」2010年・日本映画
原作:湊かなえ 監督:中島哲也 主演:松たか子
○「最後の忠臣蔵」2010年・日本映画
原作:池宮彰一郎 監督:杉田成道 主演:役所広司、佐藤浩市
小田嶋:俺、昨日全部見たのよ。
岡:えーっ、3本一気に?
小田嶋:うん。
昔の3本立て映画館みたいですね、自宅が。
小田嶋:はい。じゃあ3本、総括して取りあえず、感想を言いましょう。
岡:お前、ノートを取ってあるじゃないか。そこに絵も描いてあったぞ。
小田嶋:はい、そうですね。それはおいおい公開するとして、岡がこういうものを指定してきた、ということに、俺は心配になったね。
岡:何で。
小田嶋:だってさ。
岡:ていうか、俺、何を挙げたんだっけ。
小田嶋:「悪人」と「告白」と「最後の忠臣蔵」。何でまたこんな暗いものを3本も、というラインナップだよ。
確かに暗い。
岡:うん。暗いね。
小田嶋:暗いでしょう。
岡:いや、ものすごく暗いね。
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