でも市川さんは文学の先生として教える立場ですから、解説せざるを得ない、という場合はあるでしょう。
市川:うーん、でも、解説しきれちゃう作品は、あんまりすごくないんですよ。本当に面白いものは、何度読んでも新しい発見があったり、かえって分からなくなったりする。だから、授業で学生さんがどれだけ納得してくれても、一年の最後に「でもウソだけどね」と付け加えずにはいられないんですよね。授業を聞いてくれていた岡さんの前で言うのはまずいですが(笑)。
敦:例えば、人生を左右するような深刻な事態に直面したとき、「私はそのとき、人間とはこういうものだと知りました」と、言おうと思えば言えちゃう。だけど、それ、ウソじゃないですか。
市川:そう、ウソなんですよ。
敦:ところが、それを――この発言はカットしてもいいんだけど、兄貴はうまい具合に言っちゃうと思うんだけど。
市川:あはは。

岡:カットだろう、これ(笑)。
敦:本当に思っていることは置いておいて、こう言えばウケる、なんていうことを言っちゃうかもしれないな、兄貴は、と思うんだけど。
岡:うん。言っちゃうかもしれないし、書いちゃうかもしれない。(「俺って本当のファンじゃない?」の輪島の話)
敦:しかもそれが外れなかったりするんだよね(笑)。だけど……ね。
市川:結構な人がだまされるわけですね(笑)。
インファイター・アツシ
まさに広告ですね。
敦:でも、僕はね、そういうときは絶対に黙っていよう、と。そのために話が完結しなくて崩れたりしても、この人、アホじゃないの? と思われたとしてもいいから、そのときは黙っちゃおう、と。
市川:でも、そのコミュニケーションが成立しているから、うれしいコメントも来るんですよね。
だから超接近戦に持ち込むと、敦さんは無敵なんですね。
岡:強いんだ。
だけど、ちょっと遠距離戦になると、ことのほかたぶん、
岡:俺たちの方が強いんだぞ、と。
市川:そうそう。
自分たちで言いますか。
市川:すみません…って、反射的に謝っちゃった。
敦:接近戦に持ち込むというか、工夫も何もなしに必死で突進するってことですね。ぼくみたいに不器用な人間は、考えたり工夫したりすると、かえって悪くなるだけだから。
敦さんのその諦観はどこからくるのでしょうか。
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