小田嶋:昔のジャーナリストという人たちって、実は特権階級なんだけど、でもその特権に守られていたけれども、人間の力でやっていた、ということだよね。特権は別にして、人間の力でやるところがコピペ、コピペでいっちゃっている今の方が、やはり危うい感じはしますよね。

:でも結局、後戻りはできないわけじゃない? だから、どうなっちゃうんだろうね。

小田嶋:あと5年、10年ぐらいたつと、「ウィキペディア」や「グーグル」を調べる職業ができているかもしれない。あるいは、それらを信用しちゃっているやつは情報弱者だよ、という話が広まってきて、もう1回、1次資料を当たるのが本当のジャーナリストでしょう、と。

:戻るのかね。

小田嶋:戻らないといけないんだろうけれどもね。

情報はふたたび、金持ちのものになる?

:ウェブの導入期に、情報はタダだ、という浸透の仕方があったけれど、タダがよかったのか、という疑問はあるよね。

小田嶋:今はその揺り戻しが来て、経費をかけて1次資料に当たっているメディアは、やはり課金の方向に向かっているけどね。

:だったら、今度は情報の信用性は金で買う、ということになってくるのかな。

小田嶋:金で情報の格差が生じてくる、ということはあるだろうし、あとはたぶん持っているツール云々も出てくるよね。

:それはどういうことなのか。

小田嶋:デジタルデバイドという変な言葉があって、情報弱者に似たようなニュアンスなんだけど。一番身近な例で言うと、若いやつの中に携帯からウェブを見ている人たちと、パソコンでウェブを見ている人たちと、二通りがいるということで。これに今度はiPadが入ってくると、そのどれを持っているのか――3つとも持っているのか、1つだけしか持ってないのか、携帯でしかウェブに関われないのかということで、そいつの情報を引き出す能力とか、関与できる能力とか、いろいろなところに自分を宣伝する能力とかに、おそらくとても巨大な差がつくと言われている。

:すると情報差別みたいな話になってくるだろう。そう言われたら、俺なんか何もできないもんね。

小田嶋:ま、年上はいいんだよ、もう。

:俺たち、もういいの?

小田嶋:大変なのは、若いやつですよ。我々はもうこれから発信するあれじゃなくて、自分の見たいものを見ればいいという位置だから。ほれ、録りだめしていたマラドーナを、そろそろ見ようかね、なんて。

誰がためにネットは生まれしか

:それはそれとして、だけど、発信しないと食えないじゃないか。

小田嶋:岡の仕事としてはね。

:でも、発信するのにそんな情報がいるのかな、とも思うんだけど。

小田嶋:問題は、チームを組む相手のレベルの話になるんじゃないかな。たいがいの人間は発信の大本になることは、あまりないから、その周辺の人の仕事というのが、ホワイトカラーの大半の仕事になっていくんじゃないか。そのときに、情報の辺りを使いこなせているとどうなるか、という話で。履歴書に書くのに、自動車運転免許があるのとないのとの違い、みたいなものは、ちょっと出てくるはずなんだけど。

:それと、インターネットが出てきたときは、グーテンベルグの印刷技術と同じぐらいの革命だと言われたんだよね。それで多くの人が豊かになる、と。当時は僕もそうなのかな、と思ったんだけど、インターネットはグーグルとか、孫(正義)さんとか、一部の人たちはものすごく儲かったけれど、ほとんどの人は奪われたんじゃないかと思いますね。

(続きます!)

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