一体何を指しているのですか?

小田嶋:「ファニッシュ(備え付ける)」って意味の英単語。歯の間に1万点棒を挟んでいるということなんだけどさ、よく分からない(笑)。

でも、今に至るまでちゃんと覚えているじゃないですか。

小田嶋:うん、覚えているね。

:確かに。それでいて、「アント」「アーント」の区別さえつかないんだから。

小田嶋:あれの弱点は、その辺りだよ。

:カタカナ読みだから、分からないんだ。

小田嶋:俺らの時代の都立高校って、学校群制度があったでしょう。

:文京、豊島、板橋、北区、っていう第4学区。

小田嶋:その4区の中で、とにかく文京区から小石川に来る連中というのは、学力が高かったのよ。というのは、公立でも中学が全体的に優秀だから、内申書が取れないんだよ。

:文京区の中学では、みんな内申は40か41にならされていた、ということは聞いたことがある。

小田嶋:でないと、そこそこ優秀でも、筑駒とか筑波大附とか開成とか行くやつに、全部持っていかれてしまう。そういう環境から小石川に入るためには、300点満点の試験で、280点とか290点とかを取らないとだめなわけだけど、文京区の某中学校なんかは、百何十人の生徒のうち30人ぐらいが小石川に入ってきてた。

地頭の差は、あっという間に…

:30人はすごいな。

小田嶋:だから文京区の中学では、普通にちょっとできれば、みんな小石川に行く、ぐらいのものなんだよ。

:でも、北とか豊島は違うよ。

小田嶋:北区だと、クラスで一番できる子だよね。

:そうだよね。豊島区もそうですよ。クラスで1番、学校で3番以内とか。

小田嶋:という人は、内申書の点数はだいたい44とか45とか、あるいは48とか51とかを取っているわけだよ。

:俺は技術・家庭がどうしても4で、満点にひとつ欠ける50だった。

小田嶋:ということは、お前なんか試験は200点取れば入れたんだよ。

中学時代の岡さんが優秀だったことは、『夏の果て』にも書いてありますね。

※注:『夏の果て』(2013年・小学館刊):岡康道による初の自伝的長編小説。「人生の諸問題」とぜひご併読ください。

:あれは小説ですからね。僕が自慢しているように受け取らないでくださいね。一応フィクションですから。

立体物の工作ができなかったそうですね、小説によると。

:いや、小説ですから。話を戻してよ。

小田嶋:だから、小石川の受験は、内申44だと苦しいわけよ。

:安全なのは45と言われていたよね。

小田嶋:でも、文京区の連中は42とか40とかで入って来ているわけ。ということは、よっぽど試験の素点が高いということでしょう。俺なんか260点ぎりぎりで入って、「結構取ったな」と思っていたら、あいつらは290点とか298点とか言っている。

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