何で、三大庭園にならなかったのでしょうかね。

:それは広告する人に恵まれなかったんじゃないの(笑)。

小田嶋:ここの辺りは、駒込に「旧古河庭園」もあるし、結構庭園が多いんですよね。古河庭園は英国式バラ園と日本庭園のセットで、ちょっと変わった庭園なんです。

:僕たちの中に郷土愛に近い何かがある(笑)。

緑の森の上あたりに見える、あの建物は何ですか。

小田嶋:あれは「文京シビックセンター」ですね。文京区の区役所。

:ああいう超高層ビルは、僕らのころはなかったですよ。だから森が森のままに見えていた。

小田嶋:ああいうのを建てるのが、文京区のよくないところですよね。

:庭を歩くの、ちょっと飽きちゃったな。(と、すぐに飽きる岡さん)

じゃあ、外に出ましょう。

(六義園の門を出て、不忍通りを渡ると、「東洋文庫」の建物に至る。)

東洋文庫

:ここ、僕は知らなかったな。

東洋文庫は、東洋史と文化に関する「知」の拠点として有名な場所です。小石川高校の隣ぐらいな近所ですよ。知らなかったとは、にわかには信じがたい。

小田嶋:俺も知らなかった。3年間通っていて知らないという、その教養のなさが。

:恥ずかしいね。

小田嶋:俺は最近、ツイッターで知り合いのインテリ編集者たちが、「今度、東洋文庫に行ってうんぬん」「だったら、千石駅から歩いてうんぬん」というやり取りをしているのを見て、「ん? それは、うちの高校の隣ではないでしょうか」ってことで知ったんだもん。

約40年後に。

小田嶋:格好がつかなかったですよね。

(で、いよいよ母校の小石川高校へ)

後輩たちは、きちんと挨拶

小石川中等教育学校

:実は東京都立小石川高校という名前はもうなくて、今は東京都立小石川中等教育学校という名前になっているんだよね。

小田嶋:校舎も建て替わっていて、当時と全然違います。

:全然違っている。だからここもあの喫茶店と同じでね、意外と感情移入しにくい。あまりにも変わっちゃってて、寂しいね。

(校内に足を踏み入れた一同に、在校生たちが「こんにちは」と挨拶をしてくれる)

小田嶋:今日びの在校生は、礼儀正しいね。俺らのころって、大人の姿が見えると「何だ?」みたいになっていたじゃない?

:何か、制服もちゃんと着ているしね。

当時、制服はあったんですか。

小田嶋:あったけど、都立はだいたい標準服という扱いで、着る人たちだけが着ていた。それが3分の1ぐらいかな。あとは私服で、当時はアイビー全盛だったから、アイビーの格好をしていましたよ。

ちゃんとしたアイビー?

:もちろんニセだよ。

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