吉田:単純に言うと物が売れなくなったからですよ。

:物が売れない。キャンペーンが当たらない。

吉田:物が売れた時代は、広告に対する消費者の目も温かかった。冒頭で岡が言った、今の時代の冷たさというのは、消費者の目も冷たくなっていることと、すごく関係があると思う。

消費者としての経験値が高くなると、あらの方が目についてしまいます。

吉田:企業がメディアを通して言ってくることよりも、自分の友達とか、あるいはそのものに関して詳しい人の意見の方が、はるかにアテになるな、ということは、実は以前からみんなの中にあったんですけど、その後半のところはマスメディアには載らなかったんですよね。

:確かにそうですよね。

吉田:今は変な話、AVだったらあいつが詳しいとか、レストランだったらあいつだとか、各ジャンルに詳しい人がいて、その詳しさについても確認できるじゃない?

:そういう人たちがメディアになっちゃったわけ?

吉田:そう。要するにネットによって、評判がメディアになっちゃった。となると、商品がよくないのに、広告だけで何とかしようとしても、その企てはすぐに見破られてしまう。

:つらい時代だよね。

ブランドの「タネ」は最初から埋められている

その中で「ブランド」が「ブランド」たるには、何が最も必要でしょうか。最後に教えてください。

吉田:僕は、商品を作るその研究開発の時に、すでにブランドの物語のネタが仕込まれているものしか、もうブランドにはならない世の中になったんだと思う。

ん?

吉田:補足しますね(笑)。その物語というのは、スペックとかではなく、製法へのこだわりや素材、デザイン。それらはもちろんだけど、思い入れとか、こだわりとか、エモーショナルなことです。だから、商品開発ができたときには、もう心を打つコピーやアイコンができている。そういうのが理想ですね。

だとしたら、商品開発と広告が、もっと近づく必要がある、と。昨今言われている「グロースハッキング」ですね。

吉田:今は商品開発をする人と、広告をする人が、所属も人種も違い、お互いを知らないまま進んでいる場合がほとんどですが、分かっている企業は、そこのところの仕組みを変えようとしている。その仕組みから変えて行く意志を持てば、21世紀の日本企業のブランド作りは、必ずまた成功すると思います。

(番外編は終了です。次からいよいよ小石川放浪編です)

(「人生の諸問題 令和リターンズ」はこちら 再公開記事のリストはこちらの記事の最後のページにございます)


「人生の諸問題」は4冊の単行本になっています。刊行順に『人生2割がちょうどいい』『ガラパゴスでいいじゃない』『いつだって僕たちは途上にいる』(以上講談社刊)『人生の諸問題 五十路越え』(弊社刊)

この記事はシリーズ「もう一度読みたい」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。