吉田:製造業は、研究開発費を投資して、工場を建てて、ラインを整えて、と、何千億円ものリスクを負って商品を作りますよね。それをどう回収するかといえば、商品ができたら広告をうまく打つことで、消費者の購買欲求を喚起して、それで初めて大儲けにつなげていける。
そういう製造業が研究開発の成果であるスペックに走るのは、僕だって理解できるんですよ。だけど、そのスペックが市場に通じるという観点であれば、ソニーやパナソニックが、サムスンに負けるはずはなかった。でも負けてしまったのはなぜか。それはつまり、ブランド競争で負けてしまったということなんですよ。
岡:日本のテレビは知らないうちに、リモコンのボタンがめちゃくちゃ多くなって、もうわけが分からなくなっているよね。

「孤独に効く」より画素数を、省電力を
吉田:高い技術開発力があると、「あれもできます、これもできます」になるんだけど、そんなややこしい機能、消費者は別に求めてはいないでしょう。ブランドを考えるときに、商品のもつ本質を考え抜くことは必須なのに、技術競争にかまけて、その本質を突かなかった。
岡:確かに、その商品があることの意味を突き詰めていい、ということであれば、広告は変わるんだよね。たとえばテレビであれば、「孤独に効く」というテーマで深いキャンペーンはできますよ。でも普通、それは売り上げに結び付かないと言われて、それよりもスペックを言ってください、というようなセールスプロモーションの方向に行っちゃうんですよ。
吉田:ブランド形成ではない方向にね。
岡:クライアントが僕たちに向かって「『what to say』について、一緒に考えよう」と言ってくれるだけで、表現はずいぶん違ってくるのに、それができていないもどかしさがありますね。
(→後編に続きます)
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